研究課題/領域番号 |
17H03788
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
天知 誠吾 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80323393)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヨウ素 / ヨウ素酸呼吸 / ヨウ素蓄積 / 細菌 / 甲状腺 |
研究実績の概要 |
サブテーマ1「細菌におけるヨウ素の抗酸化作用とTH合成能」において、ヨウ素蓄積細菌Arenibacter sp. C-21を放射性ヨウ素125I-と共に培養し、培養に伴って細胞内にヨウ素が蓄積することを確認した。また、C-21株の静止菌体を調製し、これを125I-と共にインキュベートしたところ、グルコース依存的にヨウ素を蓄積することを確認した。さらにAbcam社のHydrogen peroxide assay kitを用いて、C-21細胞からグルコース依存的に過酸化水素が活性することを明らかにした。しかしながら本キットによる測定の安定性と再現性に問題があったこと等から、OxyRed probeおよびHRP (peroxidase)を用いたキットに依存しないH2O2定量法の確立を現在目指しているところである。 サブテーマ2「ヨウ素栄養性細菌iodotrophsの探索とその機能解析」において、異化的ヨウ素酸還元細菌Pseudomonas sp. SCT株をヨウ素酸(IO3-)を唯一の電子受容体として嫌気的に培養し、その生育がヨウ素酸の添加量に依存すること、また種々の呼吸阻害剤によって阻害されることを明らかにした。さらに脱窒条件とヨウ素酸呼吸条件で生育させた菌体よりタンパクを抽出し、プロテオーム解析に供した。その結果、ヨウ素酸呼吸条件では新規DMSO reductase familyに属するタンパク(IdrAB)の発現が顕著に上昇すること、またその近傍のcytochrome c peroxidase等も発現上昇することが明らかとなった。無細胞抽出液を用いた活性測定より、Idrはヨウ素酸により誘導され、ペリプラズム画分に局在することも明らかになった。さらにNative-PAGEによりIdrを活性染色することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ1「細菌におけるヨウ素の抗酸化作用とTH合成能」において、5年ぶりに解凍したC-21のヨウ素蓄積プロファイルが以前と少し変わっていたこと、またAbcam社のHydrogen peroxide assay kitの再現性に問題があったこと等から、ヨウ素の活性酸素除去に及ぼす影響の観察が遅れ気味である。 一方、サブテーマ2「ヨウ素栄養性細菌iodotrophsの探索とその機能解析」においては、ヨウ素酸還元が呼吸の一形態であることが証明され、さらにプロテオーム解析によりヨウ素還元酵素の本体と考えられるタンパクの特定にも成功した。 以上のことから、全体としてはおおむね順調に進展している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1「細菌におけるヨウ素の抗酸化作用とTH合成能」では、ヨウ素の存在下でC-21株の過酸化水素の発生量にどのような変化を生じるのか観察する。また、C-21株を放射性ヨウ素(125I-)と共に培養し、菌体を回収後Lysozyme処理を行い、定法に従ってペリプラズム、細胞膜、細胞内画分に分画する。これら各画分中の放射能をNaIシンチレーションシステムで測定し、蓄積ヨウ素の局在性を明らかにする。次に、C-21株の細胞中におけるTH(T3, T4)の有無を確認する。 サブテーマ2「ヨウ素栄養性細菌”iodotrophs”の探索とその機能解析」では、ヨウ素酸呼吸細菌Pseudomonas sp. SCT株を用いたプロテオーム解析により、新規異化的ヨウ素酸還元酵素遺伝子(idrA)の特定に成功しつつある。本年度はidrAB、およびその近傍に存在するcytochrome c peroxidase ganeなど、活性酸素の除去に関与すると疑われる遺伝子群の発現解析をおこなうと共に、ヨウ素酸還元酵素のNative-PAGEから得られる活性バンドのLC-MS/MS解析によりIdrABがヨウ素酸還元活性を有することを直接的に証明する。
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