サブテーマ1「細菌におけるヨウ素の抗酸化作用とTH合成能」では、ヨウ素蓄積細菌Arenibacter sp. C-21株が蓄積するヨウ素が主に細胞膜の膜タンパクに局在することがわかったため、このタンパクの同定を目標として、可溶化処理とSDS-PAGEによる分離を試みた。放射性ヨウ素I-125を用いたオートラジオグラフにより目的バンドを絞り込み、LC-MS/MS解析により目的タンパクの同定を行ったところ、バナジウム依存型ハロペルオキシダーゼ(vHPO)と類似したタンパクのチロシン残基に特異的に結合(ヨード化)することがわかった。 サブテーマ2「ヨウ素栄養性細菌”iodotrophs”の探索とその機能解析」では、前年度までにPseudomonas sp. SCT株のヨウ素酸呼吸で機能する主要なタンパク質群(IdrABP1P2および酸素高親和性のシトクロムオキシダーゼ)の同定と転写解析を終了した。最終年度は、亜塩素酸不均化酵素(Cld)類似タンパクの発現と転写を確認すると共に、ヨウ素酸呼吸に伴い微量(2~8 microM)の過酸化水素が発生することを確認した。また、In-Fusionクローニング、接合伝達、相同組換えなどの技術を用いてSCT株のidrA遺伝子欠損変異株を作出し、この変異株が好気条件や脱窒条件では生育するものの、ヨウ素酸呼吸条件では生育しないことを確認した。以上の結果から、idrA遺伝子がSCT株のヨウ素酸呼吸に必須であることを直接的に証明した。さらに、idrAのオルソログ遺伝子を有するいくつかの好気性海洋細菌を入手し、これらが微好気条件でヨウ素酸を還元することも確認した。
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