研究課題
本研究では、申請者が先導研究してきた非病原菌Pseudoxanthomonas mexicana WO24由来S46ペプチダーゼをモデル酵素とし、病原菌由来S46ペプチダーゼの網羅的な基質特異性解析およびサブサイトとα-ヘリカルドメインを中心とした構造機能相関の解明を行う。最終的には、Family S46構造機能相関の完全解明を目的としている。さらに、本研究は、ヒトが有しないS46ペプチダーゼをターゲットとした、歯周病原因菌、多剤耐性日和見感染菌を抑制可能な創薬開発への基礎研究となる。本年度は以下の「課題(1)S46群の構造解明」、「課題(2)S46群の網羅的基質特異性の解明」、「課題(3)S46 基質認識機構の解明」を行った。課題(1)S46群の構造解明 病原菌由来のS46ペプチダーゼ群PgDPP7、SpDPP11、PeDPP7、PeDPP11、SmDPP7およびSmDPP11の発現と精製法の確立に成功した。さらに、SmDPP7の結晶構造解析に成功した。今後は、結晶化に成功していない標的タンパク質の純度向上を目指す。課題(2)S46群の網羅的基質特異性の解明 P1基質特異性を合成基質を用いて決定した。これにより、病原菌由来S46ペプチダーゼ群の活性の違いが明らかになった。さらに、オリゴペプチドを用いてP2・P1特異性の解析に必要なジペプチドの検出基盤構築を試みた。その結果、生成ジペプチドのアミノ末端をHPLC分離後に蛍光修飾して検出する方法では検出困難だと明らかになった。今後は、他の検出法やLC/MSを用いた分解後のジペプチド検出基盤を構築する課題(3)S46 基質認識機構の解明 DAP BIIをモデル酵素とした変異解析によってDAPBIIのS682残基が基質特異性に大きく寄与していることが見出された。今後は、他のタイプ(S, R)における寄与を解析する。
2: おおむね順調に進展している
課題(1)S46群の構造解明 予定通り標的酵素群の発現量と純度向上を実現した。さらに、院内感染の起因菌で肺炎や菌血症での死亡率が5~7割に達する多剤耐性日和見感染菌Stenotrophomonas maltophilia に由来するSmDPP7については結晶構造解析に成功した。課題(2)S46群の網羅的基質特異性の解明 標的S46群のP1基質特異性を合成基質を用いて決定した。これにより、病原菌由来S46ペプチダーゼ群の活性の違いが明らかになった。さらに、オリゴペプチドを用いてP2・P1特異性の解析に必要なジペプチドの検出基盤構築を試みた。その結果、生成ジペプチドのアミノ末端をHPLC分離後に蛍光修飾して検出する方法では、蛍光が消光されてしまうケースがあるため、検出困難な場合があるとことが明らかになった。そのため、今後は消光され無いようなペプチドを使用するあるいはLC/MSや他の検出手法を検討していく。課題(3)S46 群の基質認識機構の解明 S1サブサイトにおいて、S682残基が基質特異性に大きく寄与していることが見出された。さらに、SmDPP7の構造解析に成功したことで、基質P2の認識に関する知見が得られた。以上のように、S46群のP2、P1認識機構の解明に向けて研究が前進した。
(1)S46群の構造解明 結晶化に成功していないS46群、PgDPP7、SpDPP11、PeDPP7、PeDPP11、SmDPP11の精製純度の向上および結晶構造の取得を目指し、S46群の構造解析を行う。さらに、SmDPP7や新たに得られた構造とDAP BIIおよびPgDPP11の構造を比較することで、Family S46の基質認識機構の解明を試みる。(2)・(4)S46群の網羅的基質特異性およびイミド結合切断能の解明 羅的基質特異性およびイミド結合切断能の解明のため、本研究では、長鎖ホルモンを含む様々なオリゴペプチドを基質とした解析を行っている。次年度はジペプチド検出基盤の構築を目指す。それと並行して、ジペプチドとの競合実験やP2部位の基質特異性の解析に特化した蛍光ペプチドも用いて解析を行う。(3)S46基質認識機構の解明 基質認識残基の基質特異性への寄与を解析するため、DAP BIIをモデル酵素とした変異解析によって基質認識に関与している残基の同定を目指す。また、精製に成功している他のS46群についても同様に変異解析を行い、S46群の基質認識機構の解明を試みる。また、網羅的に基質認識残基を解析することで、基質認識構成残基と基質特異性の相関関係を明らかにする。本年度以降は、P1認識残基だけではなく、P2基質認識残基に焦点を当てて解析を行っていく。(5)S46α-ヘリカルドメインの機能解明 S46α-ヘリカルドメインの機能解明のため、基質の選択性とその相関性を明らかにするための活性測定と共結晶構造解析を試みる。また、S46α-ヘリカルドメインを置換や欠損させた、キメラタンパク質を発現・精製し、基質長・構造特異性の変化を観察する。さらに、豊富にあるアミノ酸配列等の情報を用いたドライ解析からも、S46α-ヘリカルドメインの機能解明に迫る。
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http://www.microorganisms.jp/ogasawara-lab/
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