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2018 年度 実績報告書

ナノ磁気オルガネラの高時空間分解能ライブ解析による形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H03791
研究機関金沢大学

研究代表者

福森 義宏  金沢大学, その他部局等, その他 (60135655)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードイメージング / 磁性細菌 / 原核細胞 / オルガネラ
研究実績の概要

本研究では、細菌に磁気感知という特性をもたらしているナノサイズの原核細胞オルガネラ「マグネトソーム」を生細胞内で可視化することにより、その形成過程の解明に取り組む。これまでマグネトソームの形成過程は、マグネトソーム局在蛋白質の個々の遺伝子欠損株を用いた電子顕微鏡観察結果の静止画的情報をもとに議論されてきた。本研究では、全反射蛍光顕微鏡などを用いて、生細胞内でのマグネトソーム形成機構を時空間的に解析する。本年度の研究実績は以下の通りである。
1.マグネトソームアイランドにコードされる遺伝子のうち、mamB, E, I, L, Qの5つの遺伝子は、マグネトソーム小胞形成に必須の遺伝子であり、それぞれ膜蛋白質(マグネトソーム小胞形成蛋白質)をコードしている。このうちMamB, E, I, Qの4つの膜蛋白質の大腸菌での発現系構築に成功した。現在、これらの蛋白質のポリクローナル抗体を作製中である。
2.マグネトソーム形成過程の生細胞蛍光イメージングを行うため、マグネトソーム小胞形成蛋白質とGFPとの融合蛋白質(MamB-GFP, MamE-GFP, MamI-GFPおよび MamL-GFP)を発現する磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1株をそれぞれ作製し、小胞形成過程の生細胞蛍光イメージングに必要な実験基盤を構築した。また、これらの蛋白質の細胞内局在を明らかにした。
3.Halotagは多色蛍光による生細胞内イメージングや、細胞内での蛋白質相互作用解析に利用できる多機能性のタグ蛋白質であり、マグネトソーム形成機構の解析に有効である。これまでAMB-1細胞内でのHalotag発現は達成されていなかったが、本研究でhalotag遺伝子のコドンとプロモーターの最適化を行うことでAMB-1でのHalotag発現に初めて成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

mamB, E, I, L, Qはすべての磁性細菌に保存される遺伝子であり、遺伝子欠損株の観察結果からマグネトソーム形成に必須とされているが、これらの遺伝子にコードされる蛋白質の細胞内局在や機能は不明である。今年度の研究成果により、M. magnetotacticum AMB-1におけるMamB, MamE, MamI, MamL, および MamQ蛋白質の細胞内局在を観察した。また、これらのマグネトソーム小胞形成に関わる蛋白質の生細胞蛍光イメージングの実験系の構築に成功した。さらに、これらの蛋白質の大腸菌での発現、精製を行い蛋白質レベルで、マグネトソーム小胞形成機構を調べるための実験基盤を構築した。さらに、Halotag蛋白質のM. magnetotacticum AMB-1における発現に成功した。今後、Halotagを用いた多重蛍光生細胞イメージングや蛋白質相互作用解析による研究進展が期待される。以上のように、研究計画に従い順調に進展しており(2)を選択した。

今後の研究の推進方策

これまでに作製したマグネトソーム小胞形成蛋白質MamB, E, I, LおよびQとGFPとの融合蛋白質の発現系と、マグネトソームの形成を分子生物学的に制御できる磁性細菌株(QInd株)を用いて、マグネトソーム小胞の形成過程を生細胞蛍光イメージング法で観察する。QInd 株では、マグネトソーム小胞形成に必須のmamQ 遺伝子が欠失しており、プラスミド上からIPTG 依存的にMamQ蛋白質を発現させることで、マグネトソームの形成を任意のタイミングで起こすことができる。得られた株において、マグネトソーム形成に重要な機能を持つ蛋白質のマグネトソーム小胞形成時の細胞内動態を、生細胞蛍光イメージングにより観察することで、これらの蛋白質がどのようにマグネトソーム小胞形成に関わり、形成されたマグネトソームをどのように細胞内配置するかを解析する。観察に高度な空間解像能が必要な場合は、超解像レーザー顕微鏡(TCS-STED)を用いて、詳細な局在を調べる。さらに、Halotagを用いた細胞内蛋白質相互作用の解析技術を用いて、マグネトソーム小胞形成蛋白質MamB, E, I, Q, L間の蛋白質相互作用を調べ、マグネトソーム小胞形成の分子基盤を検証する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] Measuring magnetosomal pH of the magnetotactic bacterium Magnetospirillum magneticum AMB-1 using pH-sensitive fluorescent proteins.2018

    • 著者名/発表者名
      Eguchi, Y., Fukumori, Y., Taoka, A.
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 82(7) ページ: 1243-1251

    • DOI

      10.1080/09168451.2018.1451739

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 細菌の磁気感応運動のためのオルガネラ「マグネトソーム」2018

    • 著者名/発表者名
      田岡東, 福森義宏
    • 雑誌名

      生物工学

      巻: 96(5) ページ: 248-252

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] pH感受性蛍光蛋白質を用いた原核細胞およびオルガネラ内のpH蛍光イメージング解析2018

    • 著者名/発表者名
      江口 友佳子 、田岡 東 、福森 義宏
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] Measuring magnetosomal pH in living magnetotactic bacterial cell2018

    • 著者名/発表者名
      A. Taoka, Y. Eguchi, Y. Kikuchi, Y. Fukumori
    • 学会等名
      he 6th International Meeting on Magnetotactic Bacteria (MTB 2018 meeting)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Structure and function of molecular machinery for magnetotaxis2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Fukumori, A. Taoka
    • 学会等名
      The 6th International Meeting on Magnetotactic Bacteria (MTB 2018 meeting)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 高速AFM解析により明らかになったグラム陰性菌及びグラム陽性菌の産生するメンブランベシクルの物性多様性2018

    • 著者名/発表者名
      菊池 洋輔, 尾花 望, 豊福 雅典, 野村 暢彦, 古寺 哲幸, 安藤 敏夫, 福森 義宏, 田岡 東
    • 学会等名
      第56回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] High-speed atomic force microscopic observations explore molecule mechanism of bacterial cell-cell communication using membrane vesicles2018

    • 著者名/発表者名
      Yousuke Kikuchi, Nozomu Obana, Masanori Toyofuku, Nobuhiko Nomura, Noriyuki Kodera, Toshio Ando, Yoshihiro Fukumori, Azuma Taoka
    • 学会等名
      Towards Microbial Control ver 3.0
  • [図書] Biological Magnetic Materials and Applications2018

    • 著者名/発表者名
      Taoka, A. and Fukumori, Y.
    • 総ページ数
      3-22
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-9811080685
  • [学会・シンポジウム開催] The 6th International Meeting on Magnetotactic Bacteria (MTB 2018 meeting)2018

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公開日: 2019-12-27  

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