研究課題
本研究では、ナノサイズの原核細胞オルガネラ「マグネトソーム」の形成過程の解明に取り組む。本年度の研究実績は以下の通りである。1.mamE, I, L, Q遺伝子は、マグネトソーム小胞形成に必須の遺伝子であるが、コードしている蛋白質の実態は明らかにされていない。本年度は、このうちMamIとMamQと相互作用する蛋白質を網羅的に同定した。具体的には、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1にMamI-Halotagまたは、MamQ-Halotag融合蛋白質を発現させた。これらの細胞から得たマグネトソームおよび膜画分を界面活性剤で可溶化し、Halotagと特異的に結合するアフィニティカラムにかけた。カラムに結合した蛋白質組成を質量分析器で比較解析することで、AMB-1細胞内でMamIまたはMamQと複合体を形成する蛋白質を同定した。その結果、MamIとMamQは、マグネトソーム膜小胞形成に関わる蛋白質同士、さらにマグネトソーム小胞の鉄輸送・環境調節に関わる蛋白質群と複合体を形成することが示され、マグネトソーム形成に関わる蛋白質複合体の存在が示唆された(論文投稿準備中)。2.MamQを薬剤で発現誘導することでマグネトソーム合成を制御できる磁性細菌株(QInd株)を用いた生細胞蛍光イメージングにより、マグネトソーム鎖の形成過程を動画観察した。その結果、マグネトソーム合成の誘導後2時間までは、マグネトソームは細胞膜上をランダムに拡散したが、4時間後には細胞中央に直線状に固定され、マグネトソーム鎖の形成過程の動的な観察に初めて成功した。さらに、マグネトソーム配置に関わるMamK細胞骨格を欠損させたQInd株で同様の観察を行ったところ、初期のマグネトソーム配置はMamK細胞骨格に非依存的で、未知の因子が関わることが明らかになった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://pronet.w3.kanazawa-u.ac.jp