PETを唯一の炭素源として増殖する細菌Ideonella sakaiensisが効率的にPETを分解、代謝する仕組みについて研究を進めた。本年度は、(1)I. sakaiensis由来PET加水分解酵素PETaseの機能解析および機能改良、(2)PET分解に関与する遺伝子の探索と機能解析についておもに研究を進めた。(1)ではPETaseと、そのホモログである耐熱性クチナーゼ(LCC)の結晶構造比較から予測される基質結合部位周辺に認められたPETaseにおいてユニークなアミノ酸残基に着目し、これらアミノ酸残基への変異導入を相互に行って得られた変異酵素11種について、その酵素活性、基質特異性、タンパク質の安定性について調べた。その結果、PETaseに特徴的なアミノ酸を置換導入したLCC変異体はとくにPET基質特異性が顕著に上昇することが分かった。現在、研究結果を論文にまとめている。(2)では、昨年度までに実施したプロテオミクス解析により見出したPETフィルム上において有意に濃縮される機能未知タンパクについて解析を行った。組換えタンパクを大腸菌において発現させ、コバルトレジンによりアフィニティ精製を行い、粗精製酵素を得た。次に、PETやそのオリゴマーに対する活性を行ったところ、bis(2-hydroxyethyl) terephthalateに対する加水分解活性を見出した。現在、本酵素の詳細な機能解析を行うとともに、その遺伝子破壊株を作製することで、本酵素のPET代謝における役割の解明に取り組んでいる。
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