堆肥から深海底までの地球環境に高度の適応した土壌細菌“巨大菌”にレアアース(特にジスプロシウム)を与えつつ培養すると、優位に増殖速度が増加することに加え、ポリγグルタミン酸(PGA)と呼ばれる有用バイオポリマーの生細胞当たりの生産能まで増大するという画期的な応答現象を発見した。レアメタル(レアアース)は、いわゆる重金属であることから、生物応答に関しては毒性や代謝抑制ありきの解析に焦点が絞られる中、本件は生物と重金属の新たな接点に焦点を当てる千載一遇の機会と判断した。計算化学により、推定転写開始点の約200塩基対上流には金属応答性リボスイッチ様の特殊塩基配列が推定された。技術面では阻害PGA法の確立がブレークスルーになった。本来、想定される塩基配列内に巨大な結合エネルギーを持つ「二次構造(ループ)形成領域=下流遺伝子量を減衰させるアテニュエータ型調節領域」の迅速確認(同定)に繋がるハイスループット法として提案されたものだが、今回、レアメタル・レアアースの添加によって調節領域内のループ構造の解除とこれに伴う下流遺伝子群の転写再開(遺伝子量の増大)等、極めて重要な事象が網羅的に観察できることが判明した。一方、高次機能領域(推定レアアース結合ループやDegU認識配列等)を含む当該調節遺伝子部位(Cap_5’-UTR)とDegUの相互作用において、DegUだけでは不十分であることが課題になっていた。今回、ゲルシフトアッセイ技術を応用することでDegU~Pとジスプロシウム(Dy)の共存が必須とする画期的な発見に至った。その効果はDy濃度依存的に発揮されることが立証された。本件は、知る限りにおいて、前例のない生命現象の分子機構であった。以上の成果を基に、レアアースバイオテクノロジーに資する(これまでにないタイプの)核酸系新素材の設計合成が進展するものと期待される。
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