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2017 年度 実績報告書

特異な構造と活性をもつ新奇乳酸菌バクテリオシン群の生合成・作用機構の解明と利用

研究課題

研究課題/領域番号 17H03797
研究機関九州大学

研究代表者

善藤 威史  九州大学, 農学研究院, 助教 (50380556)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード抗菌ペプチド / 乳酸菌 / バクテリオシン / 生合成機構
研究実績の概要

乳酸菌が生産する抗菌ペプチドであるバクテリオシンは、安全性の高い抗菌物質として様々な用途への利用が期待される。我々は、リーダーレスバクテリオシンや環状バクテリオシンなどの構造に特徴をもつものをはじめ、菌種選択的な抗菌活性をもつものや他のバクテリオシンを伴って生産されるものなどの抗菌作用に特徴を有するものなど、多種多様な乳酸菌バクテリオシンを見出してきた。本研究では、新奇乳酸菌バクテリオシン群の食品保存や関連用途への実用と、その新たな構造と生合成機構を利用した新奇抗菌ペプチドの設計・創出に向けた分子基盤の確立を目指し、種々の新奇乳酸菌バクテリオシンの生合成機構と抗菌作用の特異な分子機構を解明することを目的とした。
新しい乳酸菌分離株より、特異な活性を示す新奇バクテリオシンを見出し、その精製・構造解析および特性の解析、さらに種々のPCRやドラフトゲノム解析によるバクテリオシン遺伝子の配列決定を行い、構造決定を進めている。一方、特異的な抗菌活性を有する新奇バクテリオシンであるラクトコッシンZの生合成遺伝子群を同定し、その生合成機構を明らかにするとともに、自己耐性機構および作用機構の一端を明らかにした。また、ラクトサイクリシンQやラクトサイクリシンQなどの新奇環状バクテリオシンの生合成に必須な遺伝子群、および環状化に必須な遺伝子群について、異種発現系の構築によって特定を進めている。多成分バクテリオシントランスポーターについては、構築した種々の異種発現株を用いてその基質特異性や分泌機構の一端を明らかにした。さらには、リーダーレスバクテリオシン・ラクティシンQや環状バクテリオシン・エンテロシンNKR-5-3Bの異種発現系を用い、バクテリオシン遺伝子に種々の変異を導入した改変バクテリオシンの生産とその抗菌活性の評価を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新しい乳酸菌分離株より、さらに新奇性の高い構造や特性を有すると予想されるバクテリオシンが得られ、その構造解析や生合成遺伝子群の解析が順調に進んでいる。これまでに構造が明らかになっていた新奇バクテリオシン・ラクトコッシンZについても、生合成機構や作用機構を明らかにすることができた。また、環状バクテリオシンであるラクトサイクリシンQやラクトサイクリシンQなどの生合成必須遺伝子群の同定も、異種発現系の構築によって順調に進展している。多成分バクテリオシントランスポーターについての解析も同様に進展した。リーダーレスバクテリオシン・ラクティシンQや環状バクテリオシン・エンテロシンNKR-5-3Bについては、これまでに構築した異種発現系を用いた改変バクテリオシンの生産と評価を進めており、他のバクテリオシンについても今後同様の手法を用いることで、バクテリオシン活性の向上や活性に必須な構造の特定などが可能と考えられる。

今後の研究の推進方策

研究はおおむね順調に進展しており、各バクテリオシンについて、これまでの内容を継続してさらに進展を図る。特異な活性あるいは強力な活性を有しながらも、構造未決定のバクテリオシンについては、精製・構造解析および生合成遺伝子群の解析を進め、新たな構造・遺伝子情報の取得を図る。必要に応じてバクテリオシン生産乳酸菌のドラフトゲノム解析なども行い、解析の迅速化を図る。環状バクテリオシンの生合成機構については、当方で発見した複数の新奇環状バクテリオシンおよび既報の環状バクテリオシンの生合成遺伝子群を比較しながら解析を進めることで、進展を図る。リーダーレスバクテリオシンと環状バクテリオシンの共通点、あるいは相違点にも着目し、環状化機構や分泌機構を含む生合成機構、自己耐性機構およびそれと密接に関与する作用機構の解明を図る。これらの機構の相関を考察することで、乳酸菌バクテリオシンとその生合成機構を基盤とした、新奇抗菌ペプチドの設計と創出の分子基盤の確立を目指す。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (3件)

  • [国際共同研究] Kasetsart University(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Kasetsart University
  • [雑誌論文] Evaluation of leader peptides that affect the secretory ability of a multiple bacteriocin transporter, EnkT2018

    • 著者名/発表者名
      Sushida Hirotoshi、Ishibashi Naoki、Zendo Takeshi、Wilaipun Pongtep、Leelawatcharamas Vichien、Nakayama Jiro、Sonomoto Kenji
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 126 ページ: 23~29

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2018.01.015

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 漬物における乳酸菌の働き2017

    • 著者名/発表者名
      小野 浩, 善藤 威史
    • 雑誌名

      生物の科学 遺伝

      巻: 71 ページ: 220-225

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Functional analysis of the biosynthetic gene cluster required for immunity and secretion of a novel Lactococcus-specific bacteriocin, lactococcin Z2017

    • 著者名/発表者名
      Daba G.M.、Ishibashi N.、Zendo T.、Sonomoto K.
    • 雑誌名

      Journal of Applied Microbiology

      巻: 123 ページ: 1124~1132

    • DOI

      10.1111/jam.13564

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ATPase activity regulation by leader peptide processing of ABC transporter maturation and secretion protein, NukT, for lantibiotic nukacin ISK-12017

    • 著者名/発表者名
      Zheng Sen、Nagao Jun-ichi、Nishie Mami、Zendo Takeshi、Sonomoto Kenji
    • 雑誌名

      Applied Microbiology and Biotechnology

      巻: 102 ページ: 763~772

    • DOI

      10.1007/s00253-017-8645-2

    • 査読あり
  • [学会発表] Analysis of the Amino Acid Residues Involved in the Biosynthesis of Ent53B2018

    • 著者名/発表者名
      Rodney H. Perez, Haruki Sugino, Takeshi Zendo, Kenji Sonomto
    • 学会等名
      International Symposium on Agricultural, Food, Environmental and Life Sciences in Asia, 2017 (AFELiSA 2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] 新奇乳酸菌バクテリオシンの探索および構造解析2018

    • 著者名/発表者名
      山城 圭輔, 大橋 千紘, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
  • [学会発表] 乳酸菌由来の環状抗菌ペプチド、エンテロシンNKR-5-3Bの生合成を担うEnkB2の機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      佐戸 翔太, 池田 史織, 高城 博也, 杉野 春貴, PEREZ Rodney H, 石橋 直樹, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
  • [学会発表] 多様な乳酸菌抗菌ペプチドの探索とその可能性2018

    • 著者名/発表者名
      善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 乳酸菌を利用した微生物制御―バクテリオシンの利用と可能性2017

    • 著者名/発表者名
      善藤 威史
    • 学会等名
      第27回食品産業創造展「機能性食品特別セミナー」
    • 招待講演
  • [学会発表] 環状バクテリオシンenterocin NKR-5-3B生合成タンパク質の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      佐戸 翔太, 池田 史織, 高城 博也, Perez RH, 杉野 春貴, 石橋 直樹, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      日本乳酸菌学会2017年度大会
  • [学会発表] Lactococcus特異的な抗菌活性を有するラクトコッシンZの生合成遺伝子群の解析2017

    • 著者名/発表者名
      Ghoson Mosbah Daba, 石橋 直樹, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      第69回日本生物工学会大会
  • [学会発表] ABCトランスポーターEnkTの基質寛容性を利用した効率的な抗菌ペプチド・バクテリオシン分泌生産系の構築2017

    • 著者名/発表者名
      酒井 美由季, 須志田 浩稔, 石橋 直樹, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 学会等名
      第69回日本生物工学会大会
  • [図書] 酵母菌・麹菌・乳酸菌の産業応用展開2018

    • 著者名/発表者名
      池田 史織, 善藤 威史, 園元 謙二(監修:五味勝也 , 阿部敬悦)
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1317-7
  • [図書] 腸内細菌の応用と市場2018

    • 著者名/発表者名
      佐戸 翔太, 善藤 威史, 園元 謙二
    • 総ページ数
      345
    • 出版者
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1324-5
  • [図書] 抗菌ペプチドの機能解明と技術利用2017

    • 著者名/発表者名
      善藤 威史, 角田 愛美, 永利 浩平, 園元 謙二(監修:長岡功)
    • 総ページ数
      239
    • 出版者
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1245-3

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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