研究課題/領域番号 |
17H03801
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 淳夫 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90186312)
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研究分担者 |
田上 貴祥 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70709849)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メガロ糖 / 機能解析 / 可溶化 |
研究実績の概要 |
我々は初めてメガロ糖(構成単糖数が10~200の糖質)の生産に成功した。性質を調べると、BCS II化合物(難水溶性・高膜透過性を示す。薬剤や食素材の多くが属す)を可溶化する画期的な機能が発見された。一般に「BCS II化合物は水溶性を高めるべき」が推奨され、メガロ糖が持つ水溶性の向上は有用である。一方、メガロ糖研究は緒に就いたばかりで、解決すべき課題が多い。本研究では、次に示す特に重要な3課題の究明が目的である。すなわち、1)メガロ糖生産酵素(多糖合成酵素)の糖合成に関与する蛋白質構造(構造因子)を解明。2)高機能な新しいメガロ糖を構築。3)環境汚染を引起こす難溶性アゾ色素の酵素分解に構築した新奇メガロ糖を活用。 以下に今年度の成果を示す。 1. 多糖合成酵素の分子機構: (1)X線結晶構造解析:精製度を上げた酵素タンパク質を取得した。同試料を用いて結晶化条件を検討している。 (2)メガロ糖生産の制御構造因子:C末端域アミノ酸に注目し変異を行ったが、野生型酵素を超える変異例は見つからなかった。X線構造情報が未解明ではあるが、本結果と先行知見を総合的に判断し、構造因子は「触媒部位の近傍または遠位に存在」と予想された。 2. 新メガロ糖の構築: (3)疎水度の解析:グルコース型メガロ糖を材料に、疎水度測定プローブによる解析を行った。疎水度と可溶化能の間に相関が観察された。従って、本プローブの使用で水溶化能予想が可能になる示唆を得た。 (4)相互作用:グルコース型メガロ糖とBCS II化合物の相互作用に関与する構造をNMR解析した。濃度依存的な変化を示すケミカル・シフトが観察され、相互作用に寄与する部分構造を把握できた。 3. アゾ色素汚染の解消: (5)アゾ色素分解酵素:水溶性アゾ色素を用いて酵素の最適分解条件を決定した。さらに、本最適条件とメガロ糖存在下で土壌色素の酵素分解実験を行い、良好な分解データが取得された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下が、自己点検評価の理由である。 1. X線結晶構造解析が難航することは、当初予想の通りであった。その主な理由は、分子量が大きく、かつアミノ酸一次構造からC末端領域に柔軟性が予測されていたからである。しかし、昨年度に判明したタンパク質純度の問題が解消された点は朗報であった。メガロ糖生産を制御する構造因子に関しても、理論構築に向けた裏付け的知見が取得された。 2. グルコース型メガロ糖の疎水度と可溶化能の間に相関関係を見出し、水溶化能予想法の手掛かりを得た。また、糖質とBCS II化合物において相互作用に貢献する基盤的構造の取得に成功した。 3. アゾ色素分解酵素の最適分解条件を確立させた。本条件においてメガロ糖共存下で予備実験(土壌色素の酵素分解)を行い、良好な結果を得た。これらの知見は、最終年度に実施予定の分解リアクター構築に大きく寄与するデータとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究の全体は順調に進行され、かつ予想を上回る成果もあるため(「現在までの進捗状況」の項を参照)、今後の推進方針に変更はない。
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