研究課題/領域番号 |
17H03803
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧 正敏 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40183610)
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研究分担者 |
柴田 秀樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30314470)
高原 照直 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90708059)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | calcium / NFAT / apoptosis / secretion / MAP1B / acetylcholine receptor / nanoluciferase / PDCD6 |
研究実績の概要 |
細胞内のCa2+濃度は細胞外と比して1~2万倍も低濃度に維持されており、一過性のCa2+濃度上昇は様々な細胞応答を引き起こす。このため、Ca2+ は、真核生物においてセカンドメッセンジャーとして作用し、細胞機能調節に重要な役割を果たしているが、Ca2+ の恒常性維持の破綻は細胞死をもたらす。転写因子NFAT は通常高リン酸化状態で細胞質に存在するが、Ca2+依存性脱リン酸化酵素calcineurinによって脱リン酸化され、核に移行して標的遺伝子の転写活性化を行うため、細胞のCa2+応答指標としてよく用いられる。しかし、従来のNFATレポーター測定系はIL2遺伝子プロモーターに存在するNFAT応答配列(IL2/NFAT-RE)が用いられているが、別の転写因子AP1との複合体形成を必要とするため、Ca2+動員とともにPKC活性化剤ホルボールエステルによるAP1の活性化も必要であり、使用薬剤の効果の解釈が複雑であった。我々は、IL8遺伝子プロモーターに存在するNFAT応答配列(IL8/NFAT-RE)が2量体NFAT依存性で他の転写因子を必要しないことを利用し、Ca2+動員のみで活性化される高感度NFATレポーター測定系を開発した。この測定系を用いて、アセチルコリン受容体のアゴニストcarbachol(CCh)の単独投与により、濃度依存的、また、時間依存的にレポーター遺伝子の発現を誘導することを示した。また、Ca2+結合タンパク質ALG-2の遺伝子発現を抑制した細胞の方が親株よりもCCh添加効果が大きかった。一方、ALG-2の新規相互作用因子としてMISLL、MAP1Bを同定した。これらの因子は小胞体からゴルジ体への初期分泌経路において作用していることが判明した。細胞死誘導因子CDIP1がALG-2と結合すること、また、ALG-2の介在によりESCRT-Iとも結合することも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Ca2+濃度の間接的モニター系としてレポーター遺伝子測定系の開発ができ、学術専門雑誌に掲載することができた。また、新規ALG-2相互作用因子についても論文を作成し、学術専門雑誌で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
Ca2+濃度の間接的モニター系としてレポーター遺伝子測定系を用いて薬剤等の効果を検討する。また、ALG-2相互作用因子MAP1BやCDIP1のさらなる機能解析を行う。さらにALG-2の新規相互作用タンパク質SARAFはストア作動性カルシウム流入(SOCE)の制御因子であり、ALG-2がSARAFとCa2+依存的に結合することの生理的意義を明らかにする。
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