研究課題
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT1)は、細胞質中のアシルCoAをアシルカルニチンへと変換することにより長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への輸送を行う酵素である。CPT1はミトコンドリア内への長鎖脂肪酸の輸送および引き続くβ酸化の律速酵素として働き、エネルギー代謝制御の中心的な役割を担うことから同酵素の哺乳動物における欠損は胎生致死をもたらす。一般に、炭素鎖12までの短・中鎖脂肪酸はCPT1非依存的にミトコンドリアへ輸送されるとされるが、その輸送機構の詳細及び制御機構は明らかではなく、またミトコンドリアの脂肪酸代謝とその制御機構についても未だ数多くの不明な点が残されている。申請者らは、ミトコンドリア内への脂肪酸輸送に必須と考えられていたカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT1)を完全欠損したショウジョウバエが、脂質・エネルギー代謝に全く異常を示さないことを見出した。この観察を契機に、CPT1経路を代替するミトコンドリアへの新たな脂肪酸輸送経路を探索するスクリーニング系を確立し、約80の候補遺伝子より輸送基質が未知のミトコンドリアSolute carrier (SLC)トランスポーターであるSLC25-FATを同定した。本年度、SLC25-FATの脂肪酸輸送における役割を明らかにするために、単離ミトコンドリアへの蛍光標識脂肪酸BODIPY-C12の取り込み量を測定することにより、脂肪酸輸送活性を評価した。その結果、SLC25-FAT はアシルCoAではなく遊離脂肪酸のミトコンドリアへの輸送にCPT1非依存的に関わること、そしてその輸送にはミトコンドリアの膜電位が必要であることが示された。本研究により、ショウジョウバエにはCPT1を介さない新規な脂肪酸輸送機構が存在すること、そしてその機構においてミトコンドリア内膜に局在するSLC25-FATが重要な役割を果たすことが明らかになった。
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