研究課題/領域番号 |
17H03807
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石川 孝博 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60285385)
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研究分担者 |
丸田 隆典 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (50607439)
吉村 和也 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (90379561)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アスコルビン酸生合成 / 光情報伝達 / シロイヌナズナ / 遺伝子発現 / リン酸化修飾 |
研究実績の概要 |
1)VTC2 遺伝子の光応答性転写調節因子の探索と同定:初年度はVTC2-prom::FLUC 遺伝子導入シロイヌナズナに対し、変異原エチルメタンスルホン酸(EMS)処理を施した自殖M2 種子ラインを得、研究分担者の中部大・吉村博士の所有する培養搬送装置付き高感度生物発光測定装置を用い、LUC活性を指標に、VTC2 プロモーターの光応答性に異常を来した変異体スクリーニングを実施し、候補となる数株の変異体ラインを得た。スクリーニング後の変異体ラインについて自殖植物体を得て、光照射後のLUC 発光が消失した変異体のみならず、LUC 活性の日周変動性に異常を示すラインを取得した。 2)アスコルビン酸によるVTC2フォスフォリラーゼ活性調節機構の解明:大腸菌においてGST融合タンパク質として組換え体VTC2を発現・精製し、種々の酸化剤および還元剤の影響を検証した結果、VTC2は酸化失活しやすこと、安定化にはDTTおよびEDTAの添加が効果的であることを見出した。さらに、VTC2はアスコルビン酸の添加によっても著しく失活すること、その失活には酸化型アスコルビン酸の分解物が影響することを明らかにし、そのメカニズムについて検証を進めている。 3)VTC3 の標的因子同定とリン酸化シグナル伝達系の解明:VTC3タンパク質をベイトに、シロイヌナズナ酵母Two-Hybrid用cDNAライブラリーに対してスクリーニングを実施した結果、16種類のVTC3相互作用タンパク質候補を得た。これらのうち、VTC3と強く相互作用する5候補のうち4つは葉緑体局在であることが示唆された。さらに今年度は、シロイヌナズナVTC3破壊株を用いてリン酸化プロテオームも実施し、明暗条件下でリン酸化状態に影響を受けるタンパク質のリスト化も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、特に研究の進捗の妨げとなる実験上のトラブルもなく、順調にほぼ当初の計画通りに進めることができた。具体的には、項目1では植物変異体の初期探索が完了したこと、項目2ではVTC2活性調節に関わる酸化型アスコルビン酸分解物同定の目処が付き、次年度には論文化する予定であること、項目3では特にリン酸化プロテオーム解析を終え、酵母Two-Hybrid探索も踏まえ、VTC3の標的となる候補タンパク質のリスト化できたこと、が挙げられる。これらの事実を根拠に、概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の進捗状況を受け、各実施項目において今後は以下のように進める方策である。 1)VTC2遺伝子の光応答性転写調節因子の探索と同定:前年度までに得られたVTC2 プロモーターの光応答性に異常を来したシロイヌナズナ変異体について、親株に戻し交配した後、表現型が分離した複数のラインからゲノムDNA を抽出し、次世代シーケンスにより原因遺伝子の同定を進め、得られた原因遺伝子についてT-DNA挿入変異株等用いて機能解析を推進する。 2)アスコルビン酸によるVTC2活性調節機構の解明:前年度までにVTC2の活性調節には酸化型アスコルビン酸あるいはその分解物が要である知見を得た。そこで今年度は各種アスコルビン酸分解物の活性への影響を検討し、VTC2活性抑制要因化合物の同定をすすめた後、速度論的解析を行いデータを揃えて論文化を進める。 3)VTC3標的因子同定とリン酸化シグナル伝達系の解明:前年度までに酵母ツーハイブリッド法によりシロイヌナズナのVTC3相互作用タンパク質候補を複数得た。またシロイヌナズナvtc3変異体を用いたリン酸化プロテオーム解析を実施し、野生株と比較して光条件に応答してリン酸化レベルに変動の認められるタンパク質候補をリスト化した。これらの成果に基づき本年度は両解析からオーバーラップするタンパク質あるいは著しくリン酸化応答性が消失したタンパク質を優先し、それらの遺伝子破壊株を入手し、光照射時の応答性やアスコルビン酸合成への影響を中心に検証を実施する。
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