研究課題
植物アスコルビン酸生合成の光調節機構の解明を目的に、シロイヌナズナのアスコルビン酸生合成に関連するVTC2(GDP-L-ガラクトースフォスフォリラーゼ)およびVTC3(プロテインキナーゼ/フォスファターゼ)の機能解析に焦点を絞って以下の解析を進めた。1)VTC2遺伝子の光応答性転写院試の探索と同定:エチルメタンスルホン酸処理を施したVTC2-prom::FLUC遺伝子導入シロイヌナズナに対して、研究分担者の中部大・吉村博士の所有する高感度生物発光測定装置によりLUC活性を指標に、光発現応答性に異常を来した変異株の探索を進め、コントロールに比較してLUC発現パターンに異常が認められた変異株候補を複数単離することができた。これらの候補株について、自殖M2世代の作製を進め、二次スクリーニングとしてこれらのM2株について順次評価を進めている。2)アスコルビン酸によるVTC2ホスホリラーゼ活性調節機構の解明:昨年度までにほぼ予定の実験を終え、論文の作成と基質特異性に関する追加実験を実施している。3)VTC3 の標的因子同定とリン酸化シグナル伝達系の解明:シロイヌナズナVTC3遺伝子破壊株は、光によるアスコルビン酸生合成の亢進が認められない。そこでVTC3遺伝子破壊株のリン酸化プロテオーム解析を実施し、約500タンパク質において、野生株とVTC3破壊株間で有意にリン酸化レベルが変動ていることが示された。その中にはアスコルビン酸生合成経路を構成するVTC2およびGMEタンパク質が含まれていたことから、推定リン酸化部位に変異導入を施した組換え体VTC2および新たなリン酸化標的候補のGDP-マンノースエピメラーゼ(GME)についても同様に発現コンストラクトを作成し、それぞれ大腸菌でGST融合タンパク質およびHisタグ融合タンパク質として発現・精製に成功した。現在、VTC2およびGME活性におよぼす酵素学的影響について評価を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初コロナ渦による自粛の影響で計画の実施に遅延が見られたが、その後の実験計画の見直しと期間の延長によって、ほぼ当初予定通りの進捗が見られたため。
計画1については、M2植物による二次スクリーニングを進め、安定株について次世代シーケンスによる原因遺伝子の解析を行う方針である。計画2については引続き論文の作成を進める。計画3については、組換え体VTC2およびGMEの酵素学的特性の検証を完了させるとともに、植物体におけるリン酸化修飾の影響を検証するため、植物導入用のコンストラクト作成を進める方策としている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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