昨年度トマトの根滲出液から単離に成功した青枯病菌に対する走化性誘引物質の構造をNMRとMS分析の結果からethyl β-glucoseideと推定し、その4種類の立体異性体を合成した。天然物と4種類の立体異性体のHPLC分析と旋光度測定を行った結果、走化性誘引物質はethyl β-D-glucoseideであると決定した。さらに、4種類の立体異性体の走化性誘引活性を測定した結果、ethyl β- D-glucoseideのみが活性を示すこと、その強さはポジティブコントロールとしてこれまで実験に用いてきたL-グルタミンの約1/30であることを明らかにした。 また、ethyl β- D-glucoseideの青枯病菌5菌株に対する走化性誘引活性を調べたところ、3菌株はこれまでバイオアッセイに用いてきたMAFF730138株と同程度の反応を示し、残り2株は応答性が弱かった。しかし、応答性の弱かった2株はグルタミンに対してもあまり誘引されなかったことから、これら2株は運動能が低い菌株であり、ethyl β-D-glucoseideの走化性誘引活性は青枯病菌の菌株に対する特異性は無いと考えられた。 ブラックマッペの根滲出液に含まれる走化性誘引物質の精製を進めた結果、DIOLシリカゲルカラムクロマトグラフィーの10% MeOH-CHCl3画分と30% MeOH-CHCl3画分に活性を見いだした。いずれの画分もTLC分析の結果、α-ナフトール-硫酸で発色する数個のスポットを与えたことから、糖を含む化合物であると考えられた。さらに、10% MeOH-CHCl3画分をHPLC分析した結果、トマト根滲出液から得られた走化性誘引物質ethyl β-glucoseideと同じ保持時間にピークを与えた。
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