これまでの研究で、我々はトマト根滲出液の活性炭吸着画分から青枯病菌の新規走化性誘引物質エチル グルコシドを単離同定した。今年度は、エチル グルコシドと多くの細菌に走化性誘引活性を示すアミノ酸、有機酸、糖がトマト根滲出液の青枯病菌誘引活性にどの程度寄与しているかを検討した。その結果、エチル グルコシドはグルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸やクエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸と同程度の活性を示すこと、糖類は活性を示さないことを明らかにした。また、エチル グルコシドを含む根滲出液の活性炭吸着画分はアミノ酸や有機酸を含む活性炭非吸着画分の約1/2の活性を示すことが明らかになった。この結果から、エチル グルコシドは単独で、根進出物の走化性誘引活性に有意な寄与をしていると、結論付けられた。 青枯病菌の宿主ではないブラックマッペの根滲出物が強い走化性誘引活性を示すことを見出し、その精製単離を進めた。その結果、活性画分をHPLCで2ピークを示すまでに精製することができた。また、LC-MS分析の結果、そのうちの一つはm/z 193にピークを与え、精密質量測定の結果からC7H14O6と推定され、呈色反応の結果と考え合わせると、メチル化糖と推定された。 トマトは品種によって青枯病に対する抵抗性が異なる。抵抗性と根滲出物の青枯病菌走化性誘引活性に相関があるかを調べるために、感受性のトマト品種大型福寿と抵抗性品種LS-89 の根進出物を調製して、走化性誘引活性を調べた結果、大型福寿の根進出物の方がLS-89の根進出物より強い活性を示すことを見出した。
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