研究課題/領域番号 |
17H03814
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40206280)
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研究分担者 |
駒井 三千夫 東北大学, 農学研究科, 教授 (80143022)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ビタミンK |
研究実績の概要 |
ビタミンK(VK)は、血液凝固因子や骨タンパク質の翻訳後修飾(グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化)に必須の因子である。VKの組織分布をみると、血液凝固因子の産生の場である肝臓や骨組織以外に、脳、生殖腺、膵臓などに多量に存在するが、それらの臓器における役割は十分に明らかにされていない。本年度は、VK給餌が認知症モデル動物への認知能や、通常動物の海馬におけるニューロステロイド産生に与える影響、VK処理が培養ミクログリアでのNFκBの活性化に及ぼす影響を解析した。 認知症モデルマウス(SAMP8)にVK含量の異なる試験食を給餌した。6か月齢から、1か月毎にY字迷路試験を行い、飼料中のVKが認知能に与える影響について解析を行った。現在(8か月齢)まで、群間で認知能に差がみられておらず、飼育を継続している。 正常ラット(雄)にVK強化食を4週間給餌し、海馬におけるステロイドホルモン量を測定した。その結果、テストステロン、エストラジオール濃度は群間で差が見られず、前年度の結果と同様であった。一方、Aキナーゼ(PKA)量についてみると、VK強化群で上昇していた。さらに、PKAの下流分子であるCREB、さらに脳由来栄養因子(BDNF)量も増加していた。これらの結果より、食餌由来のVKは海馬においてPKAを活性化して、BDNFを上方制御し、海馬機能に影響を与えている可能性が示唆された。 マウス株化培養ミクログリアをリポポリサッカライド刺激後のNFκBの細胞内局在を細胞分画法や蛍光免疫染色法で解析し、VK処理により核内へのNFκBの移行阻害を確認した。また、IL-1βのプロセッシングに関与するインフラマソームの構成因子の発現に及ぼす影響を見たところ、幾つかの因子がVK処理により減少し、インフラマソームの形成低下が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知症モデルでの認知能の評価を行動試験に行っているが、現在までに群間で差がみられていない。より精度の高い機器の使用が可能になったことから、それらの機器を用いて引き続き解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
認知症モデルでの認知能の評価をより精度の高い機器を用いて行うことによって、VK給餌の認知能へ与える影響を明確にする。 培養ミクログリアにおいて、インフラマソーム関連因子の発現量がVK処理より変化したことから、成熟型IL-1βへの影響や、関連因子の発現調節因子の解析を行う。 ヒト型PXRマウスの脳におけるビタミンKの役割について、海馬に加えて、大脳皮質、嗅球におけるPXR標的遺伝子の発現、特に、ステロイド代謝、炎症シグナル関連遺伝子の発現に及ぼす影響を解析する。
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