研究課題/領域番号 |
17H03815
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 久典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (40211164)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 低タンパク質栄養 / DNAマイクロアレイ解析 / 腎臓 / SHRSP / 高血圧 / 胎児期 |
研究実績の概要 |
今年度は、胎児期低タンパク質栄養環境によりDNAのメチル化状態と遺伝子発現の両方が顕著に変化する遺伝子が生後どのように変化するかを追跡する実験の(1)動物飼育とサンプリング、(2)トランスクリプトーム解析を実施した。 (1)動物飼育とサンプリング:実験動物は、日本SLC株式会社より購入した9週齢の雌雄のSHRSP/Izm(以下SHRSP)を用いた。動物実験は、東京大学農学部動物実験委員会に申請を行い、承認を得た後に行った。妊娠期の母獣SHRSPラットに低タンパク質食(9%カゼイン食)または通常食(20%カゼイン食)を給餌し、出生後は各群ともに通常食と水道水で飼育し、出生後24日目に離乳させた。解析サンプルとして、出生後5日目(D5)、10日目(D10)の授乳期の雄性仔ラット、出生後28日目(D28)の離乳期の雄性仔ラット、出生後12週間目(W12)の成獣期の雄性仔ラットの腎臓をそれぞれ回収した。胎児期に低タンパク質食暴露された仔ラットは、D28とW12の終体重が増加傾向であり、W12の両腎臓重量が有意に増加していた。 (2)トランスクリプトーム解析:D5、D10、D28は全腎臓組織、W12は皮質と髄質に切り分けた組織を用い、Trizol法によりはRNAを抽出した後、DNAマイクロアレイ解析(Rat Genome 230 2.0 Array、Affymetrix)を行った。データは、統計解析ツールRを用いてRAMによるノーマライズ後にRankProductsで2群間比較解析を行い、FDR<0.1と判定されたプローブセットをIPAにて解析した。上位変動パスウェイがD5とD10ではともに動脈硬化シグナリングであったのに対し、D28では線維芽細胞中IL-17Aシグナリングや上皮細胞中アルドステロンシグナリングと変化していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物飼育とサンプリングは、飼育条件やサンプリング方法を検討するための予備実験を経た後に本飼育を開始したことで、解析するのに適切な動物匹数を十分確保することが出来た。また、トランスクリプトーム解析は、すでにデータを入手しており、データ解析を進行中である。またこれらの成果は、第72回日本栄養・食糧学会大会で口頭発表及びポスター発表を行うことが決定している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、平成29年度に回収した腎臓サンプルを用い、メチローム解析とプロテオーム解析に着手する予定である。メチローム解析は、抽出DNAをバイサルファイト処理後、TruSeq DNA Methylation Kit(Illumina)でサンプル調整やインデックス付加によるラベリングし、DNAシークエンサー(HiSeq2500, Illumina)を用い、全ゲノムシークエンス解析を行う。プロテオーム解析は、iTRAQ法によって行う。その後、各オミクス解析により入手したデータを比較解析し、顕著にDNAのメチル化状態と遺伝子発現、タンパク質発現が変動している可能性の高い遺伝子を絞り込む。 また、胎児期低タンパク質栄養環境によりDNAのメチル化状態と遺伝子発現の両方が著しく変化する遺伝子が生後のタンパク質摂取量の差によりどのように変化するかを検討するための実験系の動物飼育とサンプリング、トランスクリプトーム解析にも着手する。動物飼育は、妊娠期の母獣SHRSPラットに低タンパク質食(9%カゼイン食)または通常食(20%カゼイン食)を給餌し、出生後授乳期は各群ともに通常食と水道水で飼育し、出生後24日目に離乳させる。雄性の仔ラットのみ、4週齢から7週齢までの3週間、低タンパク質食(9%カゼイン食)、通常食(20%カゼイン食)、高タンパク質食(40%カゼイン食)を給餌する群に分ける。7週齢に解剖し、解析サンプルとして腎臓を回収する。
|