腹部大動脈瘤の進展や破裂に対する食品の影響には不明な点が多い。本研究は、食品と腹部大動脈瘤の関係を明らかにし、最終的には腹部大動脈瘤の予防・治療法を確立することを目的とした研究を行ってきた。これまでの疫学研究や基礎研究から魚油は腹部大動脈瘤の進展や破裂に対して予防的に働くと考えられている。これは、魚油に含まれるn-3高度不飽和脂肪酸の有する抗炎症機能に由来すると考えられる。しかしながら、腹部大動脈瘤のどこにn-3高度不飽和脂肪酸が存在するのかは明らかになっていなかった。本研究では、魚油を摂取させたモデル動物を用いて、腹部大動脈瘤壁におけるエイコサペンタエン酸(EPA)の動態を可視化して観察した結果、M2マクロファージ陽性細胞マーカーの分布とよく一致することが分かった。この結果は、EPAがM2マクロファージに取り込まれ、M2マクロファージの抗炎症機能を向上させている可能性を示すものである。そのほか、腹部大動脈瘤の予防効果を有する可能性のある食品成分を探索し、血管線維破壊予防効果がある可能性を新たに見出した(2021年度に論文投稿予定)。
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