研究課題/領域番号 |
17H03823
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
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研究分担者 |
田中 延亮 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10323479)
鈴木 智之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20633001)
上村 真由子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60444569)
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60719798)
高木 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (70315357)
小南 裕志 国立研究開発法人森林研究・整備機構, その他部局等, 主任研究員 等 (70353688)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナラ枯れ / コナラ / 枯死木 / 分解 / 菌類 / 長期モニタリング |
研究実績の概要 |
コナラは本邦の低山帯に広く優占して里山の森林バイオマスの多くを占める主要樹種だが、近年「ナラ枯れ」により大量に枯死しており、枯死木分解に伴うCO2 放出による温暖化への影響が懸念されている。本研究では、ナラ枯れにより枯死したコナラの丸太の分解過程を、人為的に伐倒した丸太の分解過程と比較モニタリングすることにより、ナラ枯れによる枯死が枯死木分解に与える影響とその時間変化を明らかにする。さらに、材分解に関わる生物群集の種間相互作用ネットワークの時間変化と分解過程の関係から、ナラ枯れが枯死木分解に与える影響の生物学的なメカニズムを解明することにより、CO2 放出量を増やさない枯死木管理方法の提案を目指している。 本研究では5 年間のモニタリングにより、(1)分解者の群集構造と相互作用ネットワークの年変化、および(2)CO2 放出量と材密度の時間変化を明らかにする。これらの関係性をナラ枯れ枯死木と伐倒木とで比較することにより、生物群集の中でナラ枯れ枯死木の分解を特徴づけていると考えられる生物種・生物間相互作用を抽出し、(3)その生物種の材分解力・生物間相互作用が分解に与える影響を室内実験により検証する。これらの情報を基に、ナラ枯れが分解者群集を介して枯死木のCO2 放出量および炭素貯留量に与える影響とそのメカニズムの解明を目指す。これにより、森林の炭素収支への影響予測や、CO2 放出量を増やしにくい生物群集に誘導するための枯死木管理方法を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の2017年には、丸太設置済みの宮城県青葉山、京都府山城、宮崎県田野において春、夏、秋のサンプリングを行うとともに、北海道苫小牧、埼玉県秩父、東京都田無、愛知県赤津にも丸太の設置を行った。これにより、当初予定していたよりも多い7ヶ所での調査とすることができただけでなく、緯度に沿ってバランスよく調査地を配置することができた。また、ナラ枯れの発生している調査地だけでなく、ナラ枯れの発生していない調査地も3ヶ所(苫小牧、秩父、田無)含むことができ、丸太レベルだけでなくより広域の林分レベルの空間スケールでデータセットを採取する準備が整った。 青葉山、山城、田野に関しては設置時(2016年秋)のDNAサンプルを解析し、菌類群集が調査地、ナラ枯れの影響を受けていることを突き止めた。ただし、分解に関わっていると考えられる材分解力の大きな担子菌類の種組成は調査地に関わらず共通であった。また、2017年秋までの1年間の材密度の残存率は、人為的に伐倒した丸太よりもナラ枯れの丸太で小さくなる傾向がみられた。以上から、ナラ枯れはコナラ丸太の初期分解を促進するが、初期分解に関係する菌類は伐倒した丸太と大きな違いはないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のデータから、ナラ枯れは材分解を促進するが初期分解に関わる菌類群集は健全伐倒した枯死木と違わないことが示唆された。ただ、今後菌類群集が遷移するにつれてナラ枯れ木と健全伐倒木で菌類群集に違いが出てくる可能性は十分考えられるため、注意してモニタリングを継続する。今後は、7カ所の調査地において年3回(春、夏、秋)の定期的なサンプリングを継続するとともに、菌類だけでなくバクテリアや原生動物など他の生物群集のデータも採取する。得られたデータから、生物群集と材分解の関係を解析していく。また、生物群集の種間相互作用のネットワークを解析し、関係性のある種のペアを抽出し、それらの種間相互作用が材分解に与える影響に関するミクロコズム実験をデザイン・実施する。
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