研究課題/領域番号 |
17H03824
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
練 春蘭 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 教授 (40376695)
|
研究分担者 |
松下 範久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00282567)
後藤 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60323474)
森長 真一 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 外生菌根菌 / Cenococccum geophilum / 耐塩性 / GWAS解析 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、海岸林に生息するマツと共生する菌根菌で広域分布種であるCenococcum geophilum菌(以下Cg)の耐塩性の分子基盤を明らかにすることを目的とした。 前年度に続き、世界各地から菌株分離を行った。すでに、日本(北海道、岩手、新潟、埼玉、千葉、長野、静岡、山梨、京都、和歌山、宮崎、沖縄、230菌株)、中国(黒竜江、遼寧、内モンゴル、西寧、新疆ウイグル自治区、雲南、重慶、河南、福建、海南、173菌株)、アメリカ(17菌株)、カナダ(4菌株)、タイ(2菌株)とフィンランド(7菌株)の針葉樹林と広葉樹林から、計433のCg菌株を分離した。そのうち、145のCg菌株を異なる塩濃度(0、50、125、250、500 mM NaCl)で 培養し、耐塩性の評価を行った。海岸林に生育するCg菌株については、全体的に耐塩性が強く、集団内の菌株耐塩性の差異が少なかった。一方、山地林からのCg菌株では、同じ集団から採集した菌株であっても、耐塩性が多様で、強いものも、弱いものも見られた。現在、産地の異なる耐塩性の強い株(500mM NaClで成長可能)と弱い株(125mM NaClでも成長しない)を用いて、DNA とRNAを抽出し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)とRNA-seq解析を実施している。また、Cg菌・マツ共生系を作成して、Cg菌株の耐塩性評価を行っている。さらに、海水を用いて、マツ(クロマツ、アカマツ、アイグロマツ)の耐塩性も評価した。耐塩性は、クロマツ>アイグロマツ>アカマツの順であり、アイグロマツの実生後代は比較的耐塩性があり、かつマツ材線虫病に対して一定の抵抗性を示し,育種母材として利用できる可能性があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のとおりに、進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.中国、日本、アメリカ、カナダ、フィンランド、タイとオーストラリアから、計300の菌株の耐塩性を評価し、GWAS解析を外注する。
2.耐塩性の強弱を明らかにした菌株を用いて、RNA-seq法によるC.geophilum耐塩性候補遺伝子を同定する。
3.耐塩性遺伝子を同定するため、Cg菌に働かせるCRISPR/Cas9システムを構築する試みである。
|