研究課題
前年度に引き続き、シデコブシとコブシの間で雑種が形成され、遺伝子浸透が起こる恐れがあるか、シデコブシはコブシとの交配によって繁殖干渉を受けるか、さらにシデコブシの生育地で雑種の生存率や成長率が高いかという問題を検討した。そのために昭和の森を調査地として用いた。また、最終年度にあたり、結果の取りまとめを行った。1.種子段階における交配パターンの解明:昨年度に引き続き、コブシ、雑種(F1、F2、コブシへの戻し交雑雑種)から種子を採取し、核マイクロサテライト分析を行って父性解析を行った。雑種の母樹において、コブシへの戻し交配の頻度が高い傾向が見られた。シデコブシとコブシの種間交配の和合性は、両種の種内交配と差はなく、またどちらが母樹になっても同様な和合性があることが示唆された。2.繁殖干渉に関する人工授粉実験:シデコブシとコブシの母樹に、種内交配、種間交配、F1雑種花粉による交配、混合花粉による交配の受粉処理を行った。昨年度と同様に、両種の間および両種と雑種間に生殖隔離がほとんどないことが確認された。また、シデコブシはコブシだけでなく、雑種からも繁殖干渉を受けることが示唆された。3.成木・稚樹・実生の再測定:成木と稚樹・実生でそれぞれ4年間と2年間の生残率と成長率を調べた。成長率には差がなかった。生残率では成木には差がなかったが、稚樹・実生でF1雑種が高い傾向にあった。4.結果の取りまとめ:これまでに得られた結果から、シデコブシとコブシの間では雑種形成が起こっており、雑種を介した遺伝子浸透が起こり得ること、シデコブシはコブシや雑種との交雑によって繁殖干渉を受けて繁殖量が減少することがわかった。形態で雑種を識別することは困難なため、事前に交雑を防ぐことが重要であり、シデコブシの自生地の近くにコブシを植栽しないことや逸出したコブシを発見したらすぐに伐採する必要がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Plant Research
巻: 132 ページ: 741~758
doi.org/10.1007/s10265-019-01134-6