研究課題
本研究の目的は、森林が持つ水質浄化機能がいつ、どのように、どの程度発揮されるかを水移動と水質形成のメカニズムに基づいて解明することである。このため、10分以下の短時間間隔での長期にわたる渓流水と地下水の水質観測を実施する。これを元に降雨時を含めた「森林の水質浄化機能」を、従来とは異なり、メカニズムに基づいて定量的に評価する。多様な水文条件を持ち、かつ気候変動影響を受ける森林流域管理に対して、研究成果を応用することを究極の目的としている。研究初年度は高時間分解能の水質データを得るために必要なセンサーの機種選定と購入を主に行った。センサーとしての性能、安定性に加え、原位置環境で長期にわたり放置して使用するため、堅牢性も求められることから、海外の文献等も参考に、慎重に機種を選定した。海外製の受注生産品であったため、購入手続きには時間を要したが、2台のうち1台は滋賀県内の森林流域において地下水の観測を開始した。もう1台は岡山県内の森林流域にて渓流水の観測に用いる予定で準備を進めている。滋賀県内の森林流域にて渓流水の観測に用いている既設のセンサーからは、硝酸イオン(NO3-)濃度、溶存有機態炭素(DOC)濃度ともに、流量の変動に対して鋭敏に応答しているが、流量-濃度関係は一定ではなく、場合によって異なることが明らかになった。また、岡山県の流域では、今後開始する水質項目と対応させる流量と濁度の観測を順調に進めていると同時に、予備テストとして水質センサーの有効性を確認している。今後、濃度と流量の応答パターンは他の森林流域でも同様なのか、またそのメカニズムはどうなっているのかを、岡山県内の観測との比較、地下水の観測との比較から、それぞれ考察する。
2: おおむね順調に進展している
装置購入に時間が掛ることは、このような研究が国内初の事例であり、取扱業者自体が不慣れであることを含めて想定通りである。このような点を含め、今後国内にこの手法を普及させる際のノウハウ蓄積につながっている。また、センサーを用いない、定期的な観測は順調に継続しており、化学分析によるデータ蓄積が進んでいる。さらに、水質形成を考える上で必要不可欠な降雨流出過程の検討については、降水量、流量、地下水位の短時間間隔連続観測を継続して行っている。
必要な観測機器類は概ね揃ったため、これ以降は試行錯誤により安定したデータ取得を勧めていく。地下水では、泥による濁り成分が観測の妨げとなることが明らかになってきているため、これを防ぐ工夫を始めている。また、岡山県内の森林流域では商用電源が利用できず、ソーターパネルによる駆動となる。このため、日照の少ない降雨時に安定して観測できるように調整を進めていく。取得したデータの検討から、一つの流域における水質浄化機能のメカニズム検証と、流域間の比較とを、できる順番に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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