研究課題/領域番号 |
17H03833
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
智和 正明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30380554)
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研究分担者 |
福澤 加里部 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10456824)
菱 拓雄 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50423009)
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
柴田 英昭 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70281798)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 窒素循環 / 森林生態系 / 土壌生態系 / 地域性 |
研究実績の概要 |
近年,人間活動による窒素沈着量の増加によって森林流域からの窒素流出が増加している.しかし,窒素沈着に対する森林流域の応答は地域によって様々で,地域スケールでの一般化には至っていない.本研究は,窒素沈着が森林流域の窒素流出に与える感受性の地域性を評価することを目的とし,1) 環境勾配の異なる国内の多地点での窒素収支や土壌窒素循環の解析を行い,地域性が生じる要因を推定し,2) 施肥実験によってその要因や機構を特定する.さらに3) 国内における公共河川水質データ等を用いて森林流域からの窒素流出の地域性を全国的に解析する.
今年度は,窒素沈着が森林流域の窒素流出に与える感受性の地域性を評価することを目的として,窒素施肥実験を本格的に開始した.中川,標茶,足寄,椎葉,篠栗の5地域において,施肥量や施肥後の測定項目を統一した全国初の広域施肥実験を行った.施肥は春季に50 kg N/ha/yrの硝酸アンモニウムを散布した.その結果,施肥一年目の結果で,スギ林の窒素流出が特異的に応答性が高いことが明らかとなり,昨年度に得られた施肥前のスギ林での硝酸イオン濃度が高い結果と調和的であった.一方隣接するナラ林では窒素流出が小さく,施肥に対する窒素流出の応答性も低かった.今後は,このような対照的な応答性を示す要因や機構を特定することで窒素流出に与える感受性の地域性を評価したい.
さらに,九州大学福岡,宮崎,北海道演習林の大気沈着モニタリング10年分のデータを用いて,窒素循環に影響を与えうる大気由来のリン沈着量の解析を行った.その結果,森林域におけるリン沈着はカリウムとの関連性が高く,生物由来の粒子の寄与が大きいことが示された.さらに都市近郊林では人為的な燃焼由来もリン沈着に寄与している可能性が示された.また,別の調査でリンは樹木の樹冠による窒素保持を増加させていることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の得られた予備調査によって,窒素循環に関わる総説が国際誌に発行された.今年度得られた成果であるリンが窒素循環に与える影響について,国際誌に発行された.大気由来のリン沈着量の解析結果は国際誌に投稿準備中である.広域施肥実験は当初の計画通りH30年度に今年度本格的に開始された.
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今後の研究の推進方策 |
施肥実験が2年目を迎え,施肥を引き続き行って調査を継続する.大気由来の窒素沈着が窒素循環に与える影響の感受性について,生物的要因なのか物理化学的な要因が効いているのかを評価していきたい.
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