研究課題
1.空中写真およびドローンによる写真解析により、ブナ林と針葉樹林の境界付近では、最近30年間で、針葉樹の下限が上昇しつつある一方で、ブナ林の上限はあまり上昇していないことが明らかとなった。また、現地調査結果のデータを合わせると、針葉樹の林冠木の枯死速度は明らかに下限付近で高くなっている一方、ブナの林冠木および稚樹はあまり移動していないことも解析でき、空中写真での解析結果を裏付ける結果が得られた。したがって、森林帯の移行スピードが退行側と侵入側で異なっている可能性がある。また、その原因として、ササ類のような林床植生による更新阻害の可能性が考えられたので、今後はそうした可能性についても解析を行う。2.融雪機を狙って、ドローンによる森林と湿原の移行帯周辺の撮影を行い、30年間で湿原の衰退が起こっている場所と残雪との関係を解析した。また、現地調査で、そうした湿原における土壌水のpHやECを測定し、融雪時期と環境条件、および競争関係にある木本種の成長と湿原の衰退の関係についても解析を行った。まだ予備的な解析結果ではあるが、融雪時期とpHにはある程度の関係があるものの湿原の衰退とは弱い間接的関係となること、湿原衰退の原因として可能性のあるハイマツの枝の伸長速度と融雪時期は関係しているものの、伸長速度と湿原の衰退には関係がないこと、また、融雪時期は優占する草本のサイズに関係があり、それを通じて湿原の衰退とも関係している可能性などが示唆された。 今後さらに、これらの解析を精緻化し、融雪時期と湿原の衰退の関係を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
ブナ林の移行速度に関してはおおむね予定通りであり、湿原と森林の関係についても解析を始めることができた。
最終年度にあたるため、これまでのデータ解析を進めるほか、補足的なデータ収集を行い、論文として投稿をめざす。また、森林と湿原の衰退に関しても新たなデータが得られつつあるので、この解析も進める。
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Oecologia
巻: 191 ページ: 39-49
https://doi.org/10.1007/s00442-019-04477-y
Oikos
巻: 128 ページ: 1816-1828
doi: 10.1111/oik.06236