研究課題/領域番号 |
17H03837
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
韓 慶民 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40391180)
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研究分担者 |
壁谷 大介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353650)
藤井 一至 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60594265)
野口 享太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353802)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生態・生物多様性 / マスディング / 窒素 / 配分 / 滲出物 |
研究実績の概要 |
結実豊凶メカニズムの解明に関与する窒素資源の役割を明らかにするために、苗場山のブナ林において種子の成熟期に安定窒素同位体(15N)ラベリングによって、土壌から吸い上げる窒素がいつどのように各器官の成長に配分されるのか調べた。結実個体と非結実個体では、新しいシュートレベルで同量の15N窒素を吸収した。結実個体では吸収した15Nの70%は種子の成長に利用されていた。一方、非結実個体では、15Nの87%は葉に配分されていた。その結果、結実個体では、非結実個体に比べ葉への15Nの配分量が減少した。枝や葉の成長は既に停止しており、非結実個体では成長後期に吸い上げた窒素を落葉後に樹体内の貯蔵窒素として木部器官に貯蔵することが示唆された。更に、結実個体では葉の窒素濃度の低下が非結実個体よりも40日早く始まり、葉の窒素を種子に転流することによりその成熟を促していた。種子生産に伴う窒素資源の制約に対し、このような巧妙なやりくりが行われていることがわかった。これらの結果より、結実個体では樹体内の貯蔵窒素の配分が少なくなるため、豊作年の翌年は凶作になることが確認された。窒素資源はブナ結実豊凶の制限要因であることがわかった。 また、根から滲出される炭素量、土壌微生物炭素・窒素量はともに夏季に増加し、根からの滲出物は基質として微生物の増殖の一因となることが確認された。一方で、土壌可溶性窒素量は冬季に高まり、夏季にやや減少する季節変化を示した。微生物による土壌窒素の無機化活性は夏季に増加するが、微生物からの窒素放出活性は根滲出物の低下する秋以降に高まる。このストイキオメトリーは根圏も同様であり、根圏の滲出物による窒素無機化の促進効果は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種子成熟期における土壌からの窒素の吸収及びその地上部各器官への配分を明らかにし、その成果を国内・国際学会で発表した。また、根から滲出物の季節変化及びその土壌窒素無機化への影響について評価した。全体として順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
観測中の個体の半分が2018年開花したため、当初の計画通り各測定項目を実行していくことで、結実豊凶メカニズムに関与する炭素・窒素資源の役割を明らかにして、研究目標が達成できると考えられる。
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