(1)ポプラCWPO-C過剰発現体、発現抑制体の表現型:WTと比べて、CWPO-C過剰発現体は成長が早く、RNAi抑制体は成長がやや遅くなった。過剰発現体水平設置後の起き上がり時間はWTの1/3と短くなり、抑制体で大きな違いは認められなかった。屈曲部におけるCWPO-CのmRNA発現は非常に大きいことから、重力屈性とCWPO-Cは強く関連している。 (2)ポプラおよびシロイヌナズナの分化・成長とフェアリー化合物の効果:シロイヌナズナのCWPO-C過剰発現では、AOHの成長促進効果が現れなかったこと、過剰発現体の内生AOH量が顕著に低下していたこと、ならびに組換体CWPO-CはAOHに対するin vitro変換活性を有していたことから、FCsと成長・分化にCWPO-Cの関与が示唆された。一方、ポプラの内生FCsはシロイヌナズナに比べて低く、FCsの生理作用も現れにくいことから、FCsの機能は植物種によって大きく異なると考えられる。 (3)CWPO-Cがシロイヌナズナ表現型と内生オーキシンに与える影響:シロイヌナズナのCWPO-C過剰発現体では内生IAA濃度が著しく減少しており、CWPO-Cが植物体内でIAAを代謝・不活化することを示唆した。これは、過剰発現体の重力屈性応答がWTに比べて非常に遅いこととも一致する。さらに、CWPO-Cの機能ホモログ遺伝子AtPrx71のKO変異体では主茎の発生や初期成長が早く、AtPrx71はこれらに対して抑制的に働いている可能性が示唆された。 組換体CWPO-Cを用いたin vitroのIAA代謝実験で、IAAはCWPO-Cによって3-ヒドロキシメチルオキソインドール→3-メチレンオキシインドールに代謝・不活化される経路が示唆された。これは、IAAオキシダーゼによるIAA→2-オキソインドール酢酸への代謝経路とは異なる、新たな知見である。
|