研究課題/領域番号 |
17H03848
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古海 誓一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (30391220)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロース / コレステリック液晶 / ブラッグ反射 / エラストマー / ゴム弾性 |
研究実績の概要 |
本申請者はこれまでに「セルロース誘導体によるコレステリック液晶の発現」に関する研究を取り組んでおり、本年度は、400 nm~800 nmの全可視波長領域でブラッグ反射を示す架橋性セルロース誘導体の合成を目的とした。 ここでは、セルロースをプロピレンオキシドによってエーテル化したヒロドキシプロピルセルロース(HPC)を出発原料として用いた。HPCの1H-NMRスペクトルを測定すると、モノマーユニットにおけるヒドロキシプロピル基の平均数(MS: Molar Substitution)を算出することができ、約4.0の値を示した。同時に、モノマーユニットにおける置換されたヒドロキシ基の平均数(DS: Degree of Substitution)は、イソシアン酸トリクロロアセチルで滴定したところ、2.3であることがわかった。これらMS値とDS値は今後、HPCの側鎖に導入するアクリロイル基などの官能基の導入量を算出する際、必要不可欠な情報である。 ついで、HPCとアクリロイルクロライドなどを反応させて、側鎖に重合性のアクリロイル基を有する架橋性セルロース誘導体を合成した。繰り返し再沈殿で精製した架橋性セルロース誘導体について、FT-IRスペクトル測定でセルロースのヒドロキシ基の伸縮振動由来の吸収帯に着目し、エステル化反応の進行度合いを確認した。1H-NMRスペクトル測定から、5.8~6.6 ppm付近に現れるアクリロイル基由来の積分値とHPC由来の積分値からアクリロイル基の導入を算出し、種々の架橋性セルロース誘導体を合成した。予備実験では、紫外線照射によってある種の架橋性セルロース誘導体の膜を作製すると、可視波長領域の反射色だけでなく、ゴム弾性を示すセルロース・コレステリック液晶エラストマー膜になることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画を遂行することができ、2件の特許を出願することができた。複数の民間企業との秘密保持契約を締結し、今後、実用化研究も実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究費を利用して、来年度には引張・圧縮試験機を設置し、種々のセルロース・コレステリック液晶エラストマー膜のゴム弾性を測定し、架橋性セルロース誘導体の化学構造とゴム弾性の相関性を見出す。
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