研究課題
季節的な貧酸素海域である長崎県・大村湾において、溶存酸素量(Dissolved Oxygen; DO)とpHの間に強い正の相関がみられる。しかし、貧酸素後期にはDOが顕著に低下してもあまり酸性化しない水塊(Less Acidified Hypoxic Water mass; LAHW)が生じる。この水塊形成の微生物学的要因として、酸素と二酸化炭素を同時に消費する化学合成独立栄養細菌が関わっている可能性がある。昨年度と同様に、採水試料からゲノムDNAを抽出し、アンモニア酸化古細菌(Thaumarchaeota)の16SrRNA 遺伝子(Thaum16S)、および古細菌のアンモニア酸化酵素遺伝子(amoA)のコピー数を定量PCR法で求めた。また、底層水および海底直上水について、無機態窒素(アンモニア、亜硝酸および硝酸イオン)濃度をオートアナライザーで測定した。その結果、2018、2019年ともに底層水におけるアンモニア濃度は貧酸素期前半(6-8月前半)に極大値(4-8μM)を示した。底層水のアンモニア極大が解消する途中で、Thaum16SおよびamoAのコピー数はいずれも増加しはじめ、貧酸素期後期(8月下旬)に極大値(10の8乗 copy/L以上)となった。また、2019年における底層水のDOとpHロガーデータにもとづいて時系列変化を再解析したところ、7月と9月のDOとpHの相関の決定係数(R^2)は0.89以上を示したが、8月には0.77と低下し、データのばらつきが前後の月と比べて大きいことが示された。8月下旬の台風によって一時的に湾内の貧酸素と酸性化が解消した後、DOは再び速やかに低下したのに対し、pH低下は3日程度遅延していた。このpH低下の遅延期間は、アンモニア酸化古細菌の遺伝子コピー数が極大値を示したタイミングと一致していた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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月刊海洋
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