• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

海洋生態系におけるラビリンチュラ類の役割の解明~魚類のDHAの起源を探る~

研究課題

研究課題/領域番号 17H03855
研究機関甲南大学

研究代表者

本多 大輔  甲南大学, 理工学部, 教授 (30322572)

研究分担者 菊地 淳  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (00321753)
長井 敏  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
桑田 晃  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (40371794)
上田 真由美  地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 技師 (60803997)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード海洋生態系 / 原生生物 / 物質循環 / 微生物ループ / 食物連鎖 / ヤブレツボカビ類 / DHA / ラビリンチュラ類
研究実績の概要

【ラビリンチュラ類の現存量を多様性の把握】大阪湾での1ヶ月ごとの定点モニタリングと北部太平洋域のサンプリングを実施した。平成29年度に最適化した環境DNA抽出および精製法,細胞数計測法を用い,特に大阪湾における2地点の表層と底層における季節ごとの4回について,Aplanochytrium系統群に属する細胞数の計測を行った。基本的にAplanochytrium類は季節を通じて環境中に存在し,特に秋の表層には多く存在し,また夏は表層よりも底層に多く存在していた。ただし,これらの要因となるような環境海水の物理的な情報や生物相との相関などは特に観察されなかった。
【ラビリンチュラ類に関係している一次生産者や捕食者の解明】Aplanochytrium属株が栄養源としている対象は,これまでに珪藻Skeletonema属株が知られていた。多様な藻類との2員培養をした結果,複数の珪藻類,緑藻類,ハプト藻類から栄養摂取していることが確認された。また,実際に環境中における関係を理解するため,ラビリンチュラ類を特異的に染色するCARD-FISH法のプロトコールの検討を進めた。その結果,甲殻類に対する非特異的な染色などもあったが,条件検討などによって,特異性の高い染色法がほぼ確立した状況となった。
【生物間エネルギー流量の測定】アプラノキトリウム属株と珪藻Skeletonema属株の二員培養において,経時的にガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成を計測した。珪藻類とラビリンチュラ類はそれぞれEPAとDHAが豊富なため,予想通り全体としてEPAからDHAに組成の転換が起こることが確認され,物質転送が起こっていることが示された。さらにラビリンチュラ類とこれを捕食する甲殻類のアルテミアの二員培養においても同様の計測を行った結果,予想よりもEPAの組成が大きくなり,今後のより詳細な分析が必要と思われた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【ラビリンチュラ類の現存量を多様性の把握】すでに現存量推定を進めているAplanochytrium系統群以外にも,2系統群について特異的プライマーおよびTaq Man probeの設計も進んでおり,現存量の把握が可能となる準備が進行している。さらに,次世代シーケンサーによる解析も実施しており,その詳細な解析を進めている段階にある。本研究で実施を予定している内容が充足できる予定である。
【ラビリンチュラ類に関係している一次生産者や捕食者の解明】ラビリンチュラ類を特異的に染色するCARD-FISH法のプロトコールは,ほぼ確立した状況となり海水サンプルの観察を進めている。さらに,本研究の一部で明らかになってきた動物プランクトンや稚魚などの消化管内に対する観察も進行中であり,本研究の予定を充足できる見通しとなっている。
【生物間エネルギー流量の測定】昨年度は,ガスクロマトグラフィー(GC)による脂肪酸組成を計測することで,物質転送が起こっていることが示したが,予定していた安定同位体を用いた物質転送量の測定には至らなかった。ただし,混合培養の立ち上げには成功しているので,今年度の実施を目指している。

今後の研究の推進方策

DHAを豊富に含むラビリンチュラ類を捕食したカイアシ類が,予想よりも炭素鎖の短いEPAの蓄積が見られたことから,予想外の代謝経路が示唆された。引き続きより詳細に分析を行うことで,重要な結果が得られるものと期待している。一方,安定同位体を用いた物質転送量の測定については,その予備的な培養実験を進めており,2019年度に実施できる予定となっている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Nutritional intake of Aplanochytrium (Labyrinthulea, Stramenopiles) from living diatoms revealed by culture experiments suggesting the new prey?predator interactions in the grazing food web of the marine ecosystem2019

    • 著者名/発表者名
      Hamamoto Yoko、Honda Daiske
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 14 ページ: e0208941-

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0208941

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nutritional Intake by Ectoplasmic Nets of Schizochytrium aggregatum (Labyrinthulomycetes, Stramenopiles)2018

    • 著者名/発表者名
      Iwata Izumi、Honda Daiske
    • 雑誌名

      Protist

      巻: 169 ページ: 727~743

    • DOI

      10.1016/j.protis.2018.06.002

    • 査読あり
  • [学会発表] ラビリンチュラ類の生態学的役割とその影響2019

    • 著者名/発表者名
      浜本 洋子, 庄野 孝範, 中井 亮佑, 上田 真由美, 長井 敏,本多 大輔
    • 学会等名
      日本藻類学会第43回京都大会
  • [学会発表] ラビリンチュラ類Aplanochytrium が栄養源とする藻類の検討と物質転送2019

    • 著者名/発表者名
      茂木大地, 浜本洋子,今井博之,本多大輔
    • 学会等名
      日本藻類学会第43回京都大会
  • [学会発表] ラビリンチュラ類Aplanochytrium 属株の外質ネットを用いた珪藻からの栄養摂取2019

    • 著者名/発表者名
      髙橋 遼,本多 大輔
    • 学会等名
      日本藻類学会第43回京都大会
  • [学会発表] 原生生物ラビリンチュラ類の 現存量から推定された海洋生態系における影響力2018

    • 著者名/発表者名
      浜本 洋子, 庄野 孝範, 中井 亮佑, 上田 真由美, 本多 大輔
    • 学会等名
      日本微生物生態学会 第32回大会
  • [学会発表] Aplanochytrium 属群の現存量から推定された海洋生態系における影響力2018

    • 著者名/発表者名
      浜本 洋子, 庄野 孝範, 中井 亮佑, 上田 真由美, 本多 大輔
    • 学会等名
      第5回ラビリンチュラシンポジウム
  • [学会発表] ラビリンチュラ類の属間におけるセルラーゼ活性の比較2018

    • 著者名/発表者名
      田中 美穂,本多大輔
    • 学会等名
      第5回ラビリンチュラシンポジウム
  • [学会発表] Aplanochytrium が栄養摂取の対象とする藻類の検討2018

    • 著者名/発表者名
      茂木大地, 浜本洋子,本多大輔
    • 学会等名
      第5回ラビリンチュラシンポジウム
  • [備考] Laby Base

    • URL

      http://syst.bio.konan-u.ac.jp/labybase/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi