研究課題
ウナギの感覚器官の発達過程と機能の特性・健全性、変態の引き金機構について明らかにするため、各感覚器官の機能形態を調べた。変態後の稚魚では口唇に加えて口腔内部と咽頭部に味覚受容関連遺伝子が発現することが明らかとなり、仔魚期における当該部位での味覚受容細胞マーカー遺伝子の発現を確認したところ、変態直前の個体においても明確な発現シグナルは得られなかった。したがって、ウナギ仔魚はそれらの全発育段階において口唇と下顎表面のみに依存して味覚を受容していることが示唆された。味覚受容細胞と側線器官の刺激受容を検出するためにエンドサイトーシス検出を試行した結果、当該手法はウナギ仔魚生体における外部化学感覚受容の検出に応用可能であると推察された。また、前年度に得られた側線系の形態データを用いて天然個体と養殖個体の側線系を比較したところ、両者に有意な差はみられなかった。一方、比較データが豊富なサケ科サクラマスの側線系においては、継代飼育魚にのみ受容器数の明瞭な減少が確認されたことから、ウナギにおける完全養殖・選抜育種においても、継代飼育による側線系の変化とそれに伴う行動・生理的変化が生じる可能性が示唆された。さらに、仔魚から稚魚への変態前後において大部分の管器感丘の体内への潜行が短期間に生じて側線系の成熟が進み、若魚の側線系に近づくことが明らかとなった。飼育実験では、内部栄養から外部栄養に切り替わる発育初期における仔魚の最適水温を検討した。はじめは高水温区において仔魚は最も高い成長を示したが、その後は高水温区では活発な遊泳と索餌活動により代謝が大きく、孵化後約1ヶ月には23~27℃でほぼ同様の体成長となった。飼育水温と耳石成長には正の相関が認められ、その関係式から天然仔魚の平均経験水温は約23℃と推定された。これは北赤道海流域において仔魚が日周鉛直移動を行う水温帯に相当することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ニホンウナギの感覚器官についての観察と実験を行い、それぞれの感覚器官について機能形態に関する知見を着実に蓄積しつつあり、おおむね順調に進展している。
発育段階に伴うウナギの感覚器官の発達過程を明らかにしていくとともに、天然魚と人工孵化魚の各感覚器官の機能形態、生息環境の差異の有無を検討することで、ニホンウナギの感覚器官に関する知見をさらに集積して研究を遂行していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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