研究課題
養殖場重要魚種において魚病細菌による疾病発生状況は毎年甚大であり、その対策が急務である。これまで、魚病細菌感染症に対してリポ多糖(LPS)の免疫賦活効果が高いにもかかわらず、魚類における分子メカニズムは殆ど理解されてこなかった。そこで申請者は、LPSを認識する機構を明らかにすることで、細菌感染を防御する重要な遺伝子を特定することができると考えた。また、ノックアウト(KO)メダカを使用することでLPS認識メカニズムをより分かりやすく解明し、効果的に病原細菌防御能を高める遺伝子を特定する。さらに、当該遺伝子を遺伝子アジュバントとして利用して、これまでにないワクチン効果を発揮させる新規アジュバントの構築を試みる。本年度は、メダカASC遺伝子の構造解析を行い、本遺伝子を標的としたゲノム編集(CRISPR-Cas)によりASC-変異メダカを作製し、現在にF4世代のホモ個体を得た。また、その他のインフラマソーム関連分子における遺伝子基盤についてメダカおよびヒラメについて解析した。さらに、pro-IL-1βの成熟過程を確認するために、メダカIL-1βに対する特異的ポリクローナル抗体を作製した。最後に、今後必要となるメダカの病原細菌感染モデルを構築するために、淡水魚由来のEdwardsiella tardaを用いて感染が成立する実験系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、インフラマソーム関連分子の1つ(アダプター分子)であるメダカASC遺伝子の構造解析を行い、本遺伝子を標的としたゲノム編集(CRISPR-Cas)によりASC-変異メダカを作製し、現在にF4世代のホモ個体を得た。また、その他のインフラマソーム関連分子における遺伝子基盤(NLR-PYD, pro-CASP1, HMGB1)についてメダカおよびヒラメについて解析した。さらに、pro-IL-1βの成熟過程を確認するために、メダカIL-1βのアミノ酸配列をもとにして、特異的ポリクローナル抗体を作製し、ウエスタンブロット法で検出バンドを確認した。最後に、今後必要となるメダカの病原細菌感染モデルを構築するために、淡水魚由来のEdwardsiella tardaを浸漬法により感染させる実験系を構築した。
作製した抗メダカIL-1β抗体の評価を行うために、メダカIL-1βおよびCASP-1遺伝子を過剰発現したメダカ胚細胞(HdrR-e3)を溶解した試料を用いてウエスタン・ブロッティングを行うことで、IL-1βタンパク質の検出を行い、抗メダカIL-1β抗体の特性を確認する。次いで、作製したASC変異メダカ(F3)世代を増やし、ホモASC変異メダカを用いて、Edwardsiella tardaによる感染実験を実施する。抗メダカIL-1β抗体を用いて、ASC変異メダカにおけるIL-1βの切断(活性化)が起こっているかを検討する。また、CRISPR/Cas9によりCASP-1遺伝子変異メダカの作製を試みる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)
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