研究課題/領域番号 |
17H03863
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70708130)
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研究分担者 |
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 魚病細菌 / LPS 認識 / ゲノム編集 / メダカ / ヒラメ |
研究実績の概要 |
申請者は、LPSを認識する機構を明らかにすることで、細菌感染を防御する重要な遺伝子を特定することができると考えた。また、ノックアウト(KO)メダカを使用することでLPS認識メカニズムをより分かりやすく解明し、効果的に病原細菌防御能を高める遺伝子を特定することを目的にして研究を行ってきた。 H31/R1年度において、Edwardsiella piscicida(旧名:E. tarda)感染したASC変異メダカにおけるサイトカイン遺伝子の発現解析を実施した結果、頭腎や腸管でのIL-1βやTNF-α遺伝子の発現が野生メダカと比べて有意に低くかった。一方、Aeromonas hydrophilaを感染させたASC変異メダカは、腸管でのIL-1β遺伝子の発現が低かく、頭腎での IFN-γやIL-10遺伝子の発現が低下した。さらに、A. hydrophilaに対するASC変異メダカの感受性は、野生型に比べて有意に高くなり、死亡率が高い結果となった。これらの結果は、細胞内寄生細菌であるE. piscicidaとは異なる結果であることから、両病原細菌に対するインフラマソームやASCスペックの応答が異なることが示唆された。これらの原因を探るためにインフラマソームやASCスペックによって活性化される酵素、カスパーゼ1(Casp1)が重要であると考え、CASP-1変異メダカの作製を行い、ホモ変異体を得た。さらに、炎症応答の下流で起こる現象をお明らかにするためにメダカおよびヒラメHMGB1遺伝子の遺伝子発現解析を行い、さらに、ヒラメ胚細胞を用いてHMGB1遺伝子を過剰発現させることで、TNFα、IL-6、I型IFNなどの遺伝子発現が誘導されることを明らかにした。今年度については、ASCやCASP1変異メダカにおける両病原細菌に対する免疫応答を解明し、炎症応答の下流で起こる現象についても継続して解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の進捗状況として以下の結果を得た。まず、細胞内寄生性の魚病細菌であるEdwardsiella piscicida(旧名:E. tarda)感染したASC変異メダカにおけるサイトカイン遺伝子の発現解析の結果、頭腎や腸管でのIL-1βやTNF-α遺伝子の発現が野生メダカと比べて有意に低くかった。一方、細胞内寄生性ではない魚病細菌であるAeromonas hydrophilaを感染させたASC変異メダカの腸管ではIL-1β遺伝子の発現が低かく、頭腎ではIFN-γやIL-10遺伝子の発現が低下した。さらに、A. hydrophilaに対するASC変異メダカの感受性は、野生型に比べて有意に高い結果となった。これらの結果は、細胞内寄生細菌であるE. piscicidaとは異なる結果であることから、両病原細菌に対するインフラマソームやASCスペックの応答が異なることが示唆された。そこで、これらの原因を探るためにインフラマソームやASCスペックによって活性化される酵素、カスパーゼ1(Casp1)が重要であると考え、CASP-1変異メダカの作製を行い、ホモ変異体を得た。さらに、炎症応答の下流で起こる現象をお明らかにするためにメダカおよびヒラメHMGB1遺伝子の同定および遺伝子発現解析を行い、E. piscicidaなどの細菌感染によって遺伝子発現が誘導された。また、ヒラメ胚細胞を用いてHMGB1遺伝子を過剰発現させることで、TNFα、IL-6、I型IFNなどの遺伝子発現が誘導されることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ASCやCASP1変異メダカにおける両病原細菌の宿主組織内における感染細菌数、殺菌効果、さらに、E. piscicida感染細胞の細胞死誘導について検討を行い、さらに詳細なメカニズムの理解に努める。また、E. piscicida感染の感受性を低下させたASC変異分子(ASC変異メダカが発現・産生する変異タンパク質)に着目し、これを遺伝子アジュバントとしてヒラメに摂取することでE. piscicidaの感染を防御できるか検討する。以上の実験は、引間グループが担当する。また、インフラマソームやASCスペックはマクロファージにおいて主に機能していることから、変異メダカにおける病原細菌に対するマクロファージの動態を理解することは非常に重要であると考え、木下グループの担当として、CRISPR/Casシステムを用いてマクロファージ蛍光標識ノックイン・メダカの作製を行い、ASCあるいはCASP1変異メダカと掛け合わせることで、変異メダカにおける病原細菌に対するマクロファージの動態を観察する。
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