これまでの研究において、Edwardsiella piscicidaおよびAeromonas hydrophilaを感染させたASC変異メダカは、腸管でのIL-1β遺伝子の発現が低下し、頭腎での IFN-γやIL-10遺伝子の発現が低下した。さらに、A. hydrophilaに対するASC変異メダカの感受性は、野生型に比べて有意に高くなる一方で、細胞内寄生細菌であるE. piscicida感染に対する感受性は低下したことから、E. piscicidaに対するASCを介した免疫応答が異なることが示唆された。これらの原因を探るためにインフラマソームやASCスペックによって活性化されるカスパーゼ1(Casp1)が重要であると考え、CASP-1変異メダカの作製を行った。 R2年度は、上記の病原細菌感染後のASCおよびCASP1変異メダカにおける組織内細菌数、殺菌効果、さらに感染細胞の細胞死誘導について検討したところ、どの実験結果も野生型と比べて低下したことから、ASCおよびCASP1が感染後の細菌排除に関与していることを示唆した。また、E. piscicida感染の感受性を低下させた変異ASCタンパク質に着目し、この遺伝子を過剰発現させる実験を、メダカ細胞を用いて実施したところ、細胞死や発現誘導遺伝子に有意な変化は見られず、さらに詳細な研究が必要と考えられた(引間グループ担当)。 また、インフラマソームやASCスペックは主にマクロファージにおいて機能することから、マクロファージの動態を詳細に理解するためにゲノム編集を用いてマクロファージ蛍光標識メダカを作製した(木下グループの担当)。さらにマクロファージ様細胞が病原体感染部位に集積している様子を蛍光顕微鏡で観察できた。将来的に上記の変異メダカと掛け合わせることで、病原細菌に対するマクロファージの動態が解明できる。
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