研究課題/領域番号 |
17H03864
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
森 司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60241379)
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研究分担者 |
井上 菜穂子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (00509515)
関 泰一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20187834)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GH / 遺伝子組換えアマゴ / トランスクリプト-ム / iTRAQ / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
成長ホルモン(GH)遺伝子組換えサケは5倍から40倍の速度で成長することが知られている。我々のGH遺伝子組換え(GH transgenic)アマゴもControlに比べ、約6倍の成長を示すが、肝臓の形態異常を示した。また組換え体では脂質の異化促進が見られるが、ATP含量は組換え体で低く、エネルギー代謝に関して不明な点が多い。そのため、本研究では可食部位の筋肉を中心に発現遺伝子のトランスクリプト-ム解析を行った。コントロールとしてはサイズが同じ非組換え体を用いて、遺伝子発現を2元配置の分散分析を用いて解析し、その解析データーに基づいてシグナルトランスダクションの解析を行った。その結果、遺伝子組換え体とコントロールは魚体重に応じて正または負に一定の割合で変化する9個のシグナル伝達を得ることができた。 本来は筋肉の解析を行う予定であったが、トラブルのため実験が行うことが出来なかった。そのため、GH組換えアマゴのエネルギー代謝を解明するため、肝臓のプロテオーム解析を行った。その結果、iTRAQを用いた肝臓の蛋白発現解析で132個のタンパク質が同定できた。 脂質関連酵素については⊿-9デサチュラーゼ、APMAPがHomo個体で減少し、Fatty acid binding protein、ApolipoproteinA-1が増加した。電子伝達系酵素についてはNADH-ubiquinone oxidoreductase、ATP synthase、CoxⅡ、CoxⅢ、CoxⅣで全ての電子伝達系酵素で増加した。また血管拡張関連タンパク質で血管拡張を促すタンパク質はHomo個体で増加していた。また炎症系マーカータンパク質はHomo個体で炎症マーカーが増加し、炎症抑制マーカーが減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
筋肉組織のiTRAQを用いたプロテオーム解析が出来なかったため、やや遅れているとの判断をした。この理由はサンプルの保存中にトラブルが起こり、サンプルのプロテオーム解析が出来なくなってしまった点にある。しかしながら、今年度に新しく準備したサンプルを用いて解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている可食部位(筋肉組織)や心臓組織のiTRAQを用いたプロテオームの解析を行う予定である。また心臓、筋肉や肝臓組織でのイメージングMSによるメタボローム解析を行う予定である。これら特定部位の代謝産物や蛋白の質量分析を行い、組換え魚と非組換え魚の筋肉で何が違うのかを明らかにする。 イメージングMSを用いた可食部位(筋肉組織)のリピドミクス。筋肉には多くの脂肪が蓄積しているが、組換え魚と非組換え魚では脂質組成が異なる。蓄積している中性脂肪に結合している脂肪酸の種類からその代謝産物までも明らかにする。これにより統合オミクスを基にしたシグナル伝達を解析する。 GH組換え体ではアスパラギン酸輸送体であるミトコンドリア内膜にあるシトリン蛋白の異常がメタボローム解析と大規模遺伝子発現解析の結果から予測される為、それを明らかにする。
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