1)性分化:チョウザメの形態的未分化生殖腺においてfoxl2、cyp19a1a、hsd17b1遺伝子の発現を指標に将来の卵巣と精巣を判別可能で、将来卵巣特異的あるいは優勢的に発現する遺伝子は多数得ているが、性特異的DNA配列の発見には至っていなかった。これまでに、雄優勢発現遺伝子について設計された3組のプライマーを用いて、16個体中10個体の遺伝的性判別に成功している。ところが、ごく最近の研究でコチョウザメにおいて遺伝的雌を判別するPCRプライマー(AllWSex2)が開発された。そこで、アムールチョウザメおよびダウリアチョウザメでもAllWSex2を用いて遺伝的性判別が可能かを検証し、両種ともAllWSex2を用いた遺伝的性判別が可能であることが明らかとなった。 2)卵成熟および排卵:飼育下のチョウザメは自発的に産卵しないため、摘出した卵巣片を培養し、卵成熟および排卵能を確認した後、ホルモン注射を行なうことで卵を得ている。しかし、これには数日の培養が必要で、さらなる簡便法が求められる。本年度は、、卵濾胞の外観的特徴、polaryzation index (PI)、排卵関連遺伝子mRNA量および排卵の有無との関係について調べた。その結果、卵濾胞に輪紋がみられ、PIが0.1以下であり、cyr61およびplatのmRNA量が低値を示す個体にホルモン注射すると排卵誘導の成功に繋がると考えられた。加えて、昨年度できなかった組換え濾胞刺激ホルモン(FSH)の大量生産と精製に成功した。 3)全雌生産:チョウザメはZZ/ZW型性決定をすることが示唆されており、本研究では、数種のチョウザメで遺伝的雌(ZW)の雄化処理(偽雄つくり)はすでに行なっている。本年度は、AllWSex2を用いて、アムールチョウザメおよび各種雑種の中から偽雄を数個体発見することができた。
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