年魚であるアユについて、遺伝的に均一な群馬系を用い、人為的に放精・産卵させた雌雄それぞれ60個体を同一環境で給餌しつつ飼育し、産卵前後および産卵後経時的に体重、体長、および生残率を測定した。その結果、雌雄とも産卵後は急激に体重が減少し、2か月程度ですべての個体が死亡した。筋肉について、産卵前後で発現が変動する遺伝子を用いたエンリッチメント解析を行ったところ、筋形成や筋肉の機能に関連する遺伝子群が産卵後に有意に低下し、産卵後の体重減少に関連すると考えられた。一方、核やミトコンドリアのオートファジー、タンパク質合成関連経路など、老化細胞に特徴的な遺伝子発現が産卵後に有意に増加し、産卵後に老化細胞の蓄積が起きている可能性が示された。 長命魚であることが期待されるオンデンザメについては、日本近海で捕獲された個体の凍結試料を入手し、全ゲノムシーケンスを行った。得られたシーケンスデータの解析は進行中だが、げっ歯類では極端に長命なハダカデバネズミと共通する遺伝子変異がみられるなど、長命と関連する可能性のある興味深い配列の特性がみられている。 また、成長ホルモン(GH)を過剰に発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを用いた老化促進モデル魚の解析について、成魚の筋肉、肝臓、脳のRNA-seqを行い、発現変動遺伝子についてエンリッチメント解析を行った。その結果、GH過剰魚では、ATMやATRといったDNA損傷に応答した細胞内シグナルの上昇が認められた。そこで、DNA損傷マーカーであるリン酸化H2AX抗体を用いた免疫染色を行った結果、仔魚および成体細胞いずれにおいてもGH過剰魚でシグナルが有意に強くなっていた。関連して、GH過剰魚ではアポトーシスを起こしている細胞の数が有意に上昇していた。こうした結果、GH過剰魚では幹細胞の数や機能が低下しており、これらた加齢の促進につながっていると考えられた。
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