真骨魚のエラ、腸、腎臓に発現する様々な膜輸送体(トランスポーター、チャネル、ポンプ)を同定して機能を明らかにした結果、淡水・海水順応における水電解質代謝を分子レベルで説明できるようになりつつある。エラ、腸、腎臓の機能は様々なホルモンにより制御されるが、プロラクチン・コルチゾールを始め淡水・海水順応を制御するとされるホルモンが膜輸送体を制御する機序は明らかでない。我々はこれまでに、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させた膜輸送体を電気生理学的に測定する優れたシステムの構築に成功し、年間を通して安定的に、様々な輸送体活性とその制御を解析する体制を構築した。膜電位を固定した状態で膜電流を測定しながら同時に細胞内イオン活性を測定するシステムを微小Mg2+電極、Na+電極、H+電極、K+電極、Cl-電極などと組み合わせることで、起電性イオン輸送体の活性測定をより高感度に行うことが可能となる。得られた装置の稼働率を上げてホルモン効果機としての膜輸送体の機能を効率よく解析し、魚類の淡水・海水順応を担う受容体と輸送体の分子相関をin vitroで解析する研究体制を整えた。海水魚腎臓による2価イオン、ホウ酸排出や水再吸収を担うと考えられているMg2+輸送体、ホウ酸輸送体、アクアポリン、Na+輸送体、K+輸送体などの活性を促進もしくは抑制するシグナルを解析し、特に海水魚集合管の尿量減少や淡水魚集合管の低張尿産生に寄与する新たな機構を見出した。
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