研究課題/領域番号 |
17H03873
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
後藤 理恵 (風藤理恵) 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70399997)
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研究分担者 |
松原 孝博 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (60443389)
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授(特定教員) (90396309)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不妊化 / ゲノム編集 / スマ / マグロ類 / 性分化 / dnd / tyr / slc24a5 |
研究実績の概要 |
【体色改変スマの作出】H29年度には、ゲノム編集によりtyrosinase及びslc24a5を改変したスマを作出したが、初期の餌料系列の不適合により11-12日令までしか生残しなかった。H30年度は初期の飼育技術の改善によりtyrosinase及びslc24a5の変異体を約3ヶ月間飼育可能となった。今回、生残した変異体は、主に体部の部分的な色素欠損を有しており、対象個体と比べて摂餌行動や遊泳行動に差は認められなかった。 【不妊化宿主作出】H29年度にはdnd遺伝子の翻訳抑制により、生殖細胞を欠損した不妊化スマの作出が可能であることを確かめていた。H30年度は、不妊化スマをさらに解析するために大量生産に向けた体制を整えていたが、dnd遺伝子のモルフォリノオリゴ結合部位に新たな多型(SNP)が認められ、それぞれの多型に対応したモルフォリノオリゴを使用する必要が生じた。さらに、モルフォリノオリゴの中に結晶様の析出が突如発生し、毒性が生じた。そこで、実験に使用する親魚のSNPを予め把握した上で、不妊化処理を行うために、SNPを短時間で検出する手法を開発し、H31年度に活用する。 【不妊化系統作出に向けた基盤研究】不妊化作出に向けた新規遺伝子の探索については、細胞分取装置(MoFlo XDP, ベックマンコールター)を用いて、ゼブラフィッシュ胞胚期胚におけるPGCs enriched fractionの検索を行った。その結果、約45%の細胞がPGCであるゲートを特定した。今後はこのゲートに出現する細胞群を用いてトランスクリプトーム解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ゲノム編集により体色を改変したスマ変異体の作出及びその継続飼育が可能であることを確かめた。これにより、ゲノム編集技術をスマの宿主開発に利用していくことが可能であることが示された。今回新たに見出されたdnd遺伝子モルフォリノオリゴの標的配列の多型について、自然集団に近いサンプルを用いているため予想の範囲内ではあったが、これまでのように自然産卵を用いたのではそれぞれのSNPに対応した不妊化処理が困難な事が明らかになった。しかし、今年度、スマの人工授精技術と短時間でのSNP検出技術を開発したことにより、今後は人工授精卵を用いてSNPに対応した不妊化処理を行う事が可能となった。また、細胞分取装置により胞胚期胚PGCs enriched fractionを得られるようになったことは、発生初期の生殖系列に関わる新規遺伝子群の探索やゲノム編集による生殖細胞への変異導入効率などを解析する上で重要な基盤技術となった。以上の成果により、概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はスマの初期餌料の不適合性により、初期の飼育が困難であったが、現在は初期餌料や飼育方法が改善され、実験魚の継続飼育が可能となった。そのため、変異体や不妊化魚の生産及び飼育については、計画通り進めていく予定である。体色を改変した変異体については、変異の程度が強いと摂餌や遊泳に支障をきたし生残できていない可能性がある。そのため、変異導入したPGCsをドナーにして借腹魚を介し、ヘテロ集団として生産することを検討する予定である。また、スマは養殖の歴史が浅く、ゲノムDNAをターゲットにした編集は個体毎の配列に依存するため汎用性が低くなる可能性がある。そこで、汎用性の高い不妊化方法の開発も検討する予定である。
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