研究課題
最終年度であるR2年度は、スマの不妊化及び低妊化について以下の実験を行った。また、宿主への移植時期を調べるために孵化後の生殖腺の発達を組織学的に調べた。1.dnd遺伝子の発現抑制による不妊化―dnd遺伝子に対するモルフォリノオリゴ(MO)を受精卵へ顕微注入することにより不妊化を誘導できることを明らかにした後、MO標的配列において二箇所の遺伝子多型(SNP)が存在することが判明した。そのため、親魚のSNPに関わらず不妊化誘導するために、個々のSNPに対応したMOを作成し、その混合液を用いて卵に顕微注入した。4種のMOを適正濃度で注入すると、MOの総濃度が高くなり、生殖細胞の欠損は誘導できたものの孵化率が顕著に下がった。そこで、2種のMOだけで対応できるように一箇所のSNPだけを持つ親魚を選抜し、宿主の親魚群とした。2.生殖細胞におけるsdf1強制発現による低妊化誘導―これまでにsdf1遺伝子を受精卵に顕微注入すると、11日齢の仔魚において85%生殖細胞が減少したことを明らかにした。そこで本年度は、低妊化のための最適濃度を明らかにするために、異なる濃度における低妊化率を調べた。その結果、濃度依存的に生殖細胞の減少が認められた。孵化仔魚の生残率及び低妊化率をもとに低妊化誘導のための最適濃度を決定した。3.初期生殖腺発達の組織学的観察-スマの生殖細胞は孵化時には腹腔背側後端の肛門直上に位置し、その後前方に移動した。孵化後10日になると生殖細胞に隣接する小型の体細胞が観察された。孵化後15日以降になると、生殖細胞は体細胞に囲まれ、一部の生殖細胞は分裂して増殖していた。この時期の生殖腺では大きさの異なる生殖細胞が生殖腺の前方から後方にまばらに存在していた。以上の結果、不妊化低妊化技術を確立し、さらに、移植のための初期生殖腺の状態を把握することができた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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