研究課題/領域番号 |
17H03881
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
藤栄 剛 明治大学, 農学部, 専任准教授 (40356316)
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研究分担者 |
仙田 徹志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00325325)
中谷 朋昭 横浜市立大学, データサイエンス学部, 教授 (60280864)
庄司 匡宏 成城大学, 経済学部, 教授 (20555289)
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任講師 (00569494)
高山 太輔 福島大学, 農学群, 准教授 (50612743)
高橋 大輔 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (30619812)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 政策評価 / ミクロデータ / 農業政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで蓄積されてきた農林水産統計の個票データを用いて、①わが国農業・農村の動態や農家家計の変貌、すなわち、農業・農村のダイナミズムを明らかにするとともに、②ミクロ計量経済学の手法により、農業政策の評価を定量的に行うことである。本年度は、「農林業センサス」、「農業経営統計調査」、「集落営農実態調査」や「復興定点観測調査」などの個票データを用いて、主に以下の点を明らかにした。 第一に、昨年度に引き続き、「農業経営統計調査」の個票パネルデータによって、農業補助金の地代への影響を検討した。その結果、北海道では、補助金が地代に転化する現象はみられるものの、その影響はアメリカを対象とした先行研究に比して、軽微であることがわかった。わが国では、補助金の地代化は構造政策上の重大な問題とは考えにくい。 第二に、「集落営農実態調査」の個票データによって、集落営農への農地集積条件を検討した。その結果、滋賀県に限定した分析ではあるものの、区画整理率などの圃場条件、集落の立地や寄合回数が農地集積と関係していることがわかった。 第三に、「復興定点観測調査」の個票データによって、東日本大震災被災農家の世代間復興格差を検討した。その結果、震災から2年が経過した段階でも、その被害は生産活動に持続的な影響を及ぼしていたことや、その影響は高齢農家で強く残った可能性が示唆された。また、分析過程において、本データが深刻なサンプルセレクションバイアスを伴うこともわかった。 第四に、「農林業センサス」の個票パネルデータによって、稲作単一経営のトップ経営体を対象に、その販売経路の特徴等を整理し、消費者への直接販売が農産物販売額にもたらした効果を検討した。その結果、消費者への直接販売(直販)の実施率が低下傾向にあることや、直販が家族経営体において農産物販売額を高める効果をもたらしたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に研究会を4回開催し、各研究者の研究成果の報告や進捗チェックを行うことにより、ほぼ当初の計画通り研究を推進することができた。また、得られた成果の一部を学会の特別セッションや関連学会において発表するとともに、国際的学術雑誌などで公表を図った。さらに、上記の研究実績の概要で述べた研究結果以外にも、研究成果の公表に向けて着実に研究が展開されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に得られた成果の一部を学会の特別セッションなどで発表するとともに、得られた成果を学術雑誌等に投稿し、公表を図る。また、これまでに得られた成果を学術図書としてとりまとめるための検討を進める。なお、本年度は昨年度に引き続き、主に「農林業センサス」の個票データをはじめとするミクロデータを用いて、政策評価や農村・農家行動のダイナミズムを明らかにする。 具体的には、「集落営農実態調査」の個票データを用いた集落営農の効率性の計測や、「農林業センサス」個票パネルデータ等を用いた法人化のインパクト評価に取り組むとともに、ゾーニング規制が農業構造に及ぼした影響の解明などを試みる。また、得られた知見は、学会大会での発表や学術雑誌等への投稿、さらには学術図書を通じて公表を図る。
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