研究課題
①国際制度比較、②都道府県定量分析、③制度的枠組み構築、の3研究コンポーネントについて本研究を継続した。①では、『認識識共同体』の役割を詳細に比較するするための分析を豪州、台湾、EU,世界農業遺産について実施した。その中で、豪州については,水市場概念の形成をめぐる構成主体間の関係性について非定量的分析を行った。水市場政策の形成に「認識共同体」の役割が不可欠であったことを明らかにした。台湾については台湾における農政立案過程に関する調査を継続した。とくに、台湾におけるコメ政策の制定過程および直接支払への移行についての詳細分析を行った。EUについては、農業環境政策立案者に対する詳細インタビューを行うとともに、海外共同研究者との議論を深めた。その結果を踏まえて、農業環境政策の立案過程における認識ネットワーク分析(Epistemic Network Analysis)を行った。これにより、英国イングランドにおける環境スチュワードシップスキーム(ESS)に関する認識共同体をめぐるネットワークの概要を分析した。さらに、国際機関としてのOECDが農政改革における『認識共同体』を醸成する場として機能していたのではないかとの作業仮説のもとに、OECDにおける農政改革議論の推移をトレースし、その過程における認識共同体の存在と役割についての分析の枠組みを構築した。②については方法論をさらに吟味する作業を行った。具体的には水稲に対する環境保全型農業直接支払の市町村別の実施面積比率(受給面積の当該市町村の水田面積に対する割合)を被説明変数とする。そのうえで、農林業センサスを中心とした地域DBによる各種データと都道府県ダミーを説明変数とする。最終的には都道府県ダミーの係数によって県の特殊性の有無を検証することとした。③については、欧州に関する調査が遅延したために、全体会議を実施できなかった。
3: やや遅れている
国際比較コンポーネントの最重要パーツである欧州共通農業政策に関する調査を2018年度夏に実施できなかったことから、それに基づき実施する予定であった英国における農業環境政策立案に関する認識共同体のネットワーク分析が翌年度に遅延した。その他の分析は概ね予定通りに進行している。
国際比較コンポーネントについては2019年度にOECDの認識共同体醸成に関する役割について分析を実施するとともに、我が国の農政改革分析等の日本パーツについての補完的な分析を実施することにより概ね完了する。都道府県定量分析についても最終的な取りまとめを行う。制度的枠組みについては、これまでの研究成果を総合するための国際ワークショップを2020年3月に実施することとし、ワークショップにおける議論を加えて、研究を総括するとともに、英語書籍出版を計画する(ワークショップまでに各研究パーツごとに章執筆を完成する予定)。
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International Journal of the Commons
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