研究課題/領域番号 |
17H03883
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
林 雅秀 山形大学, 農学部, 准教授 (30353816)
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研究分担者 |
小井田 伸雄 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (30363724)
早坂 啓造 岩手大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (60003985)
金澤 悠介 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (60572196)
脇野 博 岩手大学, 教育推進機構, 教授 (80220846)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コモンズ / ラージN / 歴史 |
研究実績の概要 |
(1)ラージN研究では、岩手県を対象とした明治44年の入会林野約130件のデータを用いた分析から、一村入会と複数村入会における集合行為成立の違いを検討した。その結果、資源の利用方法などについてのルールの制定は一村入会よりも複数村入会において行われやすい一方、人工造林の実施は複数村入会よりも一村入会において行われやすいことなどが明らかとなった。これら研究成果は、2017年5月の日本法社会学会で報告した。また、秋田県公文書館における調査から、ラージN研究に適したデータの存在が確認されたことから、写真撮影によるデータ収集を進めた。(2)少数事例研究では、岩手県の2つの村落を対象とした分析を進めた。その結果、当時の村長が村民らを相手に訴訟を起こすケースなど、これまでに想定されていないタイプの入会紛争の経過が明らかになった。(3)数理モデル研究では、先行研究のモデルをレビューし、今後の方向性を検討した。 関連して、福島県只見町の現代のコモンズの利用について、複数の集団を対象とした分析結果を2017年5月の地域社会学会で報告した。従来からの権利者集団による利用が低下するなかで、新たな利用者である外部者による利用を成功させる条件を検討した結果、集団内の密な社会関係や、リーダーと外部との社会関係の存在が外部者利用の成功の条件といえることなどが明らかとなった。さらに、同地域を対象とした調査では、地域内のコモンズ利用の詳細な経緯が分かる資料を入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)明治44年岩手データについては、関連する資料やデータに基づいて、資源利用度についてのデータの精度を高める変換方法を検討した。しかし、その結果の解釈は困難で、データ変換の方法、あるいは、元データのいずれかに問題があると考えられた。秋田でのデータ収集はほぼ順調に進んでいる。(2)少数事例研究は順調に進んでいる。(3)モデル研究も順調に進んでいる。 H29年度は3回の研究会を盛岡市で開催し、それぞれの研究担当者間で情報交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
岩手データについては引き続き分析を進める。秋田に関しては、引き続き写真撮影によるデータ収集とデータ入力を進める。 本研究課題は、課題担当者が保有するこれまでの蓄積を理由として、岩手県および秋田県を主な研究対象としている。しかし、今後、より広い領域を対象とした比較研究を進める観点から、両県以外のラージNデータの入手可能性を検討することも重要である。そこで、京都府をはじめとする関西地方の入会のラージNデータに精通した高村学人氏(立命館大学政策科学部)に、H30年度から新たに分担者を依頼することとした。
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