研究課題
本研究では、「水利システムが創出する生態水理学的環境の動的解析手法の開発」に向けて、水路や河川を対象とする生態水理学的調査と数理解析に取り組んだ。具体的には、現地調査や室内実験による基礎データの収集により、非定常流況解析システム開発に向けた基盤を整備するとともに、淡水魚の空間分布モデルや群集動態モデリングのための基礎情報を収集した。調査では、横断測量に加えて、超音波多層流向流速計(ADCP)による面的な水理調査を実施し、生息環境の定量評価に使用した。主要な河道や水路網の解析には非一様断面開水路1次元非定常流解析を適用し、必要に応じて平面2次元水理モデルを適用することにより、魚類生息環境を質と量および多様度の観点から多面的に評価した。その際、データ駆動解析のために、機械学習の一手法であるランダムフォレストを援用し、生息場モデルの高精度化と影響要因の可視化を試みた。具体的には、対象種の空間分布を規定する物理環境変数の特定には変数の重要度を使用し、物理環境条件の可視化には応答曲線を使用した。これにより、種ごとの生息環境条件が明らかになった。また、生息環境多様度の評価では、情報量エントロピーと水文地形多様度指数(HMID)を使用し、種数を含めた種の多様度との関連性について解析した。結果として、種の多様度の指標としての有効種数の有用性が示唆された。提案手法の妥当性や汎用性の評価のためには、より多くのデータと解析事例の集積が必要である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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