研究課題/領域番号 |
17H03887
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉川 夏樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90447615)
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研究分担者 |
元永 佳孝 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60334653)
本間 航介 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50323960)
満尾 世志人 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (90736951)
宮津 進 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (30757844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 魚類資源量探索システム / 医療用超音波診断装置 / 農業用水路 / 生態系ネットワーク |
研究実績の概要 |
本年度は(1)現地適用に向けた試作機の性能試験と縦断探索・評価システムの確立および(2)ネットワーク拠点を重視した生態系配慮事例の実態把握と類型化を進めた.特に,超音波装置による水路内魚類資源量探索システムの基礎的な技術の開発に注力し,性能試験を重ねた結果,概ね現地実装の目処がついたものの,医療用エコーの本システムへの援用・改良に関する課題が明らかになった. 本システムの基幹的技術である超音波装置は,沖縄に拠点をもつベンチャー企業(レキオ・パワーテクノロジー株式会社)と共同で開発している.人体用に開発された医療用エコーの超音波センシング深度(23cm)を,本研究で対象とする農業用水路の水深(約1m)に延長するため,まずは46cmのセンシング深度に対応する装置に改良し,その後1m対応の装置を試作した. これらの改良装置の性能試験を新潟大学水理実験施設内の実験水路を利用して下記項目で行った.(1)水深による魚体の視認性の検証(2)移動計測時の魚体の計数率の検証(3)センシング角度による魚体の視認性の検討.性能試験によって,以下のことが明らかになった. (1)改良版の超音波エコー画像は,水深50cm以浅では供試材料の輪郭を明確に捉えられており,周波数による相違もほぼ認められなかったが,50 cm以上の画像では,試料の視認が困難になるのに加えて,底面の視認も困難であった.(2)移動速度約20 cm/sまでは理論値どおり,全ての魚体を捉えることができたが,移動速度が大きくなるにつれ,計数率が低下する傾向を示した.(3)鉛直方向よりも,45度程度傾けてセンシングすることで魚影を明確に捉えることができることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で設定した課題については,試験および調査を通じて概ね順調に進展している.一方で,「研究実績の概要」で述べたとおり,医療用エコーを援用し,水深1m程度の水路内の魚類資源量の探索には,センシング距離の延長のための改良が必要であり,改良装置の技術的課題の解決に時間を費やしている.とりわけ,深度の大きい位置においては,超音波の減衰,フレームレートの低下などの問題が明らかとなった.振動子やプローブ形状の変更によって解決できる可能性はあるが,そのためには金型作成に大きな費用が必要となる.本研究では,安価な簡易医療用エコーの援用を前提に,装置の改良を進めているため,多少の遅延が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は残り2年となるため,本年度の早い時期に改良装置の問題を解決するため,装置の再改良によって深部観測の実現を目指すほか,浅部と深部の2層を2台の超音波画像診断装置を利用して観測する手法への転換も視野に入れて,現地観測実験を行う予定である.これらの手法を確立した後,水田および水路網において網羅的に資源量調査を行い,生態系配慮施設施工後のネットワークの状況(資源量の分布等)を明らかにするための調査を実施する.調査結果から,調査・計画段階で検討した対策により,想定どおりネットワークの保全・形成がなされているか評価を行う.併せて,資源量の多寡を決定する規定要因(水理的・物理的環境条件,施設配置状況等)について,多変量統計解析手法等を適用し,施工後における配慮施設の効果とその要因に関わる情報整理を行う.
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