令和三年度は本研究課題の最終年であり、これまで進めてきた各実験結果の解析を進め、統合することを目的とした。まず、乾いた凍土への浸潤過程に関する実験、異なる溶質(硝酸塩)濃度の黒ボク土の凍結融解実験、凍結層下の窒素動態の評価を想定した不飽和浸透および蒸発実験の結果の解析をそれぞれ進めた。そして、乾いた凍土に浸潤する際の非平衡な氷の形成・融解を表すモデルを構築し、凍土内の氷量の時間変化やそれに伴う透水係数の変化を示すとともに、初期水分量や浸潤水量とこれらの関係をまとめた。次に、溶質を含む凍土内の氷中と不凍水中への溶質の分配の時間変化の評価することに成功し、凍土内では最終的にはほぼ全ての溶質が不凍水中に集積することを示した。さらに、有機物分解と硝化のタイミングの違いや有機物分解および硝化の速度定数と微生物活性の関係を浸透環境下および蒸発環境下で整理し、各速度定数を温度に基づき関数化した。凍上過程については、まずヘレシオセルを用いた不純物を含む土の凍結実験を行い、不純物がアイスレンズの析出や成長過程に与える影響を評価するとともに、現場で用いられているSPモデルや高志の式の応用法を例示した。また、埋設物を含む地盤のコンテナサイズの凍上実験を行い、埋設物による凍結面への水分移動の抑制、冷源への熱移動の変化、凍上に伴う土圧の伝播方向の変化が地表の凍上分布に及ぼす影響を実験的に示した。そしてこれらの成果の一部を土壌物理学会や農業農村工学会、地盤工学会で発表した。こうした学会発表での議論も踏まえ、関連雑誌への成果の公表にむけて投稿準備を進めている。また、これらの知見に基づき土の凍結モデルを改良・調整した。そして、様々な環境変化に伴う土壌凍結層の発達・融解とその際の凍結層下の水分・溶質移動の一般化に向けて、数値モデルによる再現を進めている。
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