研究課題/領域番号 |
17H03894
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (50206207)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物工場 / 超音波放射圧 / 自動化 / 画像処理 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,3Dカメラと超音波集束装置を組み合わせた超音波授粉装置の開発を最終目標としている。2017年度は,イチゴ花を認識するシステムの開発と超音波集束装置を用いた授粉試験,さらに授粉状況を定量化する手法の開発を行った.具体的には色情報を主要な特徴としてイチゴの花を認識するシステムの開発を行った.3DカメラとしてはRealSense 3D Camera(Intel)を用いた.このカメラは近距離の認識を行うことができるため,省スペース化が求められる植物工場での運用に適していると考えた. システムの開発環境として,プログラミング言語はC++を用い,Visual Studio 2013にて開発を行った.3DカメラとしてRealSenseを利用するため,Intel RealSense SDKを導入した.このSDKによってRealSenseから取得したカラー画像や距離画像を処理することが可能となる.また,画像処理のライブラリとしてOpenCV 3.0を導入した.さらに,色情報を学習させるツールとしてサポートベクターマシンを採用した.このサポートベクターマシンのライブラリとしてLIBSVMを導入し開発を行った.学習データは,愛媛県のイチゴ農場(品種:紅い雫)で撮影された189枚の栽培中のイチゴ画像から作成した.イチゴ花の色情報として104サンプル,背景の色情報として100サンプル,さらにハレーションが発生した葉の色情報を50サンプル抽出した.それぞれ抽出したサンプルのうち半分を教師用データとし,残りの半分をテスト用データとした. 認識システムの精度を検証した結果,認識率は93.9%となり,総認識数のうち誤認識の占める割合は26.6%となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,2017年度はフェーズドアレイによる超音波放射圧生成装置の開発と3Dカメラによる花の三次元座標計測システムの開発を挙げており,いずれも順調に進捗している。また,花粉の飛散状況の可視化についても2017年度の計画に挙げており,こちらについても励起波長と蛍光波長の測定は終了している。 次年度以降の研究に必要な基礎的データはすべて得ており,研究の全体的な進捗は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度以降は,2017年度に作成した超音波授粉ユニットを用いて様々な周波数の放射圧をイチゴとトマトの雄しべに照射し,雄しべが振動する様子をハイスピードカメラで撮影し,その画像から振幅を測定する。一般にエネルギーを有する系が外部から与えられた刺激により固有振動を起こすことを共振と呼ぶが,外部からの刺激による振動数は固有振動数に近い状態になり,振幅が最大になる。超音波放射圧の振動数(周波数)と雄しべの振幅との関係をグラフ化して,最大振幅となる周波数を求めることで,雄しべの固有振動数を求めることができる。本プロジェクトでは雄しべを超音波放射圧で加振することで花粉を飛散させるが,花粉の飛散状態を定量的に評価する方法が必要となる。そこで,②で構築した可視化装置を用いて,一定の時間刻みごとに画像を撮影し飛散している花粉のサイズと個数をカウントするとともに,飛散の範囲についても考慮した定量的な評価方法を提案する予定である。
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