研究課題/領域番号 |
17H03895
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北野 雅治 九州大学, 農学研究院, 教授 (30153109)
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研究分担者 |
安武 大輔 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90516113)
日高 功太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 主任研究員 (80547232)
荒木 卓哉 愛媛大学, 社会連携推進機構, 准教授 (10363326)
江口 壽彦 九州大学, 生物環境利用推進センター, 准教授 (40213540)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業工学 / 農業環境・情報工学 / 局所適時環境調節 / 植物環境系輸送プロセス / 動的作物モデル |
研究実績の概要 |
作物の高収量・高品質安定生産と省エネ・省資源・省力・低コストを両立させる効率的な環境調節技術の開発と実装が強く求められており、作物生育域の必要な場所と必要な時間のみに限定したムダの無い局所・適時環境調節の最適設計が有効と考えられる。本研究は、作物の収量と品質を決定づける植物-環境系輸送プロセス(光合成、蒸散、転流、根のイオン吸収等)の作物生産場における時空間変動の新規評価法(葉面輸送現象の多点連続評価法、RIイメージングによる転流動態の非破壊連続評価法、動的グレイボックスモデル群等)を駆使して、作物生産場における局所適時環境調節の最適設計と実装を可能にする。下記の3課題で構成される。課題Ⅰ:作物群落域の微気象と葉面輸送現象の時空間変動の評価。課題Ⅱ:光合成産物のソース・シンク間の動態の時空間変動の評価。課題Ⅲ:局所適時環境調節の効果の評価と実装に向けた最適化 課題Ⅰについては、真鍮製模擬葉を用いた葉面境界層コンダクタンスの多点連続測定法を確立し、イチゴハウス、トマトハウスおよび茶園での各種環境調節稼働時の葉面境界層コンダクタンスの時空間変動を明らかにした。また、それらの結果と各種モデルを駆使して、光合成、蒸散、気孔コンダクタンスの時空間変動も評価可能であることを明らかにした。課題Ⅱについては、RIイメージングによる転流動態の非破壊連続評価法を用いて、イチゴ植物における光合成産物のソース・シンク間の動態の時空間変動の評価法を確立し、光合成産物が葉から果実へ50分程度で集積し始め、集積速度が果実の生育段階で著しく異なることを明らかにした。課題Ⅲについては、温度、光、CO2濃度、気流の局所適時環境調節法を、葉菜(ホウレンソウ)と果菜(イチゴ)を対象に検討し、それらの暖地および寒地での周年生産への適用について調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の平成29年度は、課題Ⅰに関して、葉面境界層コンダクタンスの昼夜の多点連続測定法を確立するだけでなく、実際の作物生産場(イチゴハウス、トマトハウス、茶園)での葉面境界層コンダクタンスの時空間変動に対する自然換気、循環扇、換気扇、温風ダクト、防霜ファンの効果を明らかにすることができ、さらにそれらの結果に基づいて、光合成、蒸散、気孔コンダクタンス、熱収支の時空間変動の評価が可能である確証を得た。 課題Ⅱに関しては、量子科学技術研究開発機構のRIイメージングおよびC13トレーサー法を用いて、光合成産物のソース・シンク間の動態の時空間変動と器官別分配の評価法を確立するだけでなく、光合成産物の果実への集積速度が果実の生育段階で著しく異なり、イチゴ果実では白熟期にシンク能が最大になることを明らかにし、シンク能を組み込んだ動的グレイボックスモデルの基本型も提案できた。 課題Ⅲに関しては、地温不易層を応用した適温管理、冬季の弱光補光、畝間ダクトを用いたCO2施肥等の局所適時環境調節法を、暖地、寒地の周年栽培に応用することも検討できた。 主要な成果はすでに、原著論文6報、学会全国大会発表10件、国際学会発表4件で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画以上に、植物-環境系輸送プロセスの作物生産場における時空間変動の評価法の研究が進展しており、その成果に基づいた温度、光、CO2濃度、気流の局所適時環境調節の最適化の研究を早めるとともに、冬季の野菜栽培が困難な寒地(北海道等)および夏季の野菜栽培が困難な暖地(高知県等)での周年栽培を可能とするような局所適時環境調節の実装の検討を進めたい。進捗状況によっては、最終年度前年度申請で、寒地、暖地での局所適時環境調節の実装を目的とした科学研究費に申請することを検討する。
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