研究実績の概要 |
有性生殖は、生物の遺伝的多様性を維持するために必要であり、生物は進化の過程で、有性生殖を成功させるための多様な生殖戦略を獲得してきた。本研究では、鳥類の輸卵管における精子貯蔵、精子-卵子相互作用に着目し、遺伝的多様性を維持するメカニズムの解明を目的とした。 前年度までの研究で、雄の受精能力と精子の遊泳との関係をウズラを用いて調査し、受精能力の高い精子は鞭毛が長いことが判明した。平成31年度(令和元年度)は、様々なウズラ系統のオスから精子を採取し、鞭毛長の調査を行った。Wild type, dominant black, yellow, albino, silver, panda, fawn2, DVDおよびrbの9系統の鞭毛長を測定した結果、dominant blackの鞭毛が有意に長く、fawn2の鞭毛が有意に短いことが判明した。現在、dominant blackとfawn2の交配実験によりF2家系を作成中であり、QTL-seq法により、精子鞭毛長を制御する遺伝子群を同定する予定である。また、F1の羽装によって父性の確認が可能な組み合わせとして、Wild typeおよびdominant blackの交配実験を行い、鞭毛長の長さが実際の父性に及ぼす影響を調べた。その結果、鞭毛の長いdominant blackが有意に高い父性を示すことが判明した。加えて、ヘキスト33342およびpHrodo-redによる二重染色を射出精子に施すことにより、精子貯蔵管内で人工授精後の精子を別々に可視化することにも成功した。 上述の成果に加え、精漿成分の解析を行った。その結果、ウズラの精漿には、抗酸化作用を有する2種類のタンパク質、アルブミンとトランスフェリンが存在することが判明した。また、これらの抗酸化タンパクの添加によって、インビトロで精子の生存性を向上させることにも成功した。
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