研究課題/領域番号 |
17H03903
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松井 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (40181680)
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研究分担者 |
舟場 正幸 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40238655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 畜産学 / 栄養学 |
研究実績の概要 |
肥育に伴い、肥育牛の基礎代謝は亢進する。これは、エネルギー浪費が助長され、エネルギー利用効率が低下することに起因する。寒冷環境や体脂肪増加時には、褐色脂肪細胞や脂肪組織に散在する褐色脂肪細胞様細胞(ベージュ細胞)が有する脱共役タンパク質(UCP)1により非ふるえ熱産生が生じる。一方、筋肉も寒冷時の非ふるえ熱産生に大きく貢献している。研究代表者らは、肥育牛のベージュ細胞に関する研究を行ってきたが、その過程で肥育牛骨格筋にもUCP1発現細胞が存在することを見出した。本課題では、肥育時の骨格筋における非ふるえ熱産生調節機構を解明するため、細胞培養試験ならびに肥育牛の飼養試験により、UCP1発現機構を明らかにすることを目的としている。 研究2年目には、当初の予定通り、3つの課題に取り組んだ。課題1では肥育牛骨格筋におけるUCP1発現を免疫組織化学的手法により検討した。これまで使っていたUCP1抗体とは異なるロットのUCP1抗体を用いて局在を検討したところ、これまでの知見と同様にUCP1陽性細胞は筋組織中に散在的に存在していることを確認した。課題2では黒毛和種肥育牛の肥育期間が骨格筋UCP1発現に及ぼす影響を検討するための肥育が半数の個体で完了し、遺伝子発現の解析を実施した。研究3年目に残り半数の肥育が完了し、遺伝子発現の解析を実施し、併せて考察する。課題3では屠畜場で得た肥育牛の頸部最長筋から筋衛星細胞を調製し、筋分化過程において様々な濃度のレチノイン酸(活性型ビタミンA)存在下で培養しUCP1発現変化に及ぼす影響を検討した。その結果、レチノイン酸によってUCP1発現は用量依存的に増加することが明らかになり、p38 MAPキナーゼ阻害剤存在下ではレチノイン酸誘導性UCP1発現は起こらなかった。また、PPARγ活性化によりUCP1発現は増加することも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画に沿って課題に取り組み、概ね順調に進展している。研究初年度に確立した筋衛星細胞の安定的な分化を基にして、研究2年目にレチノイン酸の効果を調べた。今後さらに培養細胞レベルでのUCP1発現調節機構の解明が期待できる。また、肥育牛を用いた試験も順調に進んでおり、研究3年目に得られるサンプルの解析が待たれる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、予定通り、肥育期間の異なる肥育牛の骨格筋サンプルを解析する。また、各種動物の骨格筋中のUCP1発現を検討すると同時にUCP1遺伝子全長の単離を試みる。さらに、ウシUCP1遺伝子産物の脱共役タンパク質としての機能を検討することとする。
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