ニワトリの幼若ヒナでは獲得免疫系が未発達である。このため、自然免疫機能を高めて感染防御機能を強化することが期待されるが、その方策は確立されていない。本研究は、鳥類消化管の自然免疫機能を強化することを目指して、消化管にToll様受容体(TLR)や抗菌ペプチドのトリβディフェンシン(AvBD)等が産生される自然免疫機能が形成されていることを明らかにし、ワクチンやプロバイオティクスでこの機能を強化できる可能性を追究することを目的としている。令和元年度までに、腸管ではAvBDと炎症性サイトカイン発現は孵化時に高く、その後に減少することを示した。この機構について抗生物質を給与して、腸管粘膜の自然免疫分子の発現は腸管微生物の影響を受けることを明らかにした。この知見を発展させて、プロバイオティクスである乳酸菌 (LR) と酪酸菌(CB) の生菌剤を給与すると、これらは自然免疫機能を強化することが期待できるという結果が得られた。また、培養した回腸と盲腸のAvBDと炎症性サイトカインの発現はTLR2、4、21のリガンドの影響を受けることも明らかにした。次に、ヒナ時に伝染性気管支炎(IB)ワクチンを接種すると、腸管粘膜の数種のAvBD発現が低下するという結果が得られた。令和2年度には、ワクチンの消化管自然免疫分子に及ぼす影響をさらに追究した。その結果、腺胃において抗菌ペプチドである数種のAvBDやカテリシジン(CATH)、そしてTLRの発現が2日齢に比べて7日齢で低下するが、IBワクチンを接種すると7日齢でもAvBD4やCATHの発現は高く維持された。一方、この自然免疫関連分子の変化とDNAメチル化との関連を解析したが明確な関連性は認められなかった。以上、本研究により、ヒナ消化管には自然免疫による感染防御系が形成されており、ワクチンやプロバイオティクスによりこれを強化できる可能性が示された。
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